このコーナーでは、様々な分野で使われているイワキのポンプの中から、「え?こんなところに?!」と思っていただけるポンプの現場にスポットを当て、いろんなシーンで活躍するポンプをご紹介しています。

できるだけ具体的な事例をご紹介したいのは山々なのですが、“大人の事情”からハッキリ社名などを明かせないケースも多く・・・そんな中でメルマガ編集部こと「イワ気になる隊」の取材をお受けくださる会社様は、本当にありがたい存在なのであります。

今回快く突撃取材をお受けくださったのは、広島県広島市にある三島食品株式会社様! もしかしたら、社名を聞いただけでは一瞬ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、同社の主力商品である、あのふりかけの「ゆかり」をご存じないとは言わせません(笑)。

しかも広島は、昨年(2017年)秋、広島東洋カープのセ・リーグ連覇で沸きに沸いた街。そんなプラスのエネルギーに引き寄せられるかのように、われわれ「イワ気になる隊」は、ルンルン気分で広島へと向かったのでありました♪

路面電車に揺られ、まずはイワキ広島営業所へ

さて、広島に来たらぜひ乗ってみたいのが「路面電車」です。関東に残っている路面電車は、荒川線と世田谷線のたった2つだけなので、ほとんど利用する機会もありませんが、こちら広島市の路面電車、通称「ひろでん」はまさに市民の足となっています。JR広島駅前には行先ごとに乗り場が何カ所もあり、多くの方々に利用されていました。その料金の安さも魅力的ながら、バスと違って渋滞もなく、ほぼ時間どおりに移動できる便利さがあるようです。

昭和の雰囲気が楽しめるレトロな感じのモデルから、近代的なモデルまでさまざまな種類の車輌が運行されていて、鉄道好きにはたまらないのではないでしょうか。

早速私たちも宮島口行きの「ひろでん」に乗り込み、東高須駅に程近いイワキの広島営業所を目指します。取材先である三島食品様には、担当営業と同行することになっているのです。同じ会社に籍を置きながらも、ふだんは顔を合わせる機会がほとんどない営業所の皆さんと直接お会いできるのも、こうした取材の醍醐味かもしれませんね。橋本所長をはじめ、広島営業所の皆さんの元気な笑顔に、4時間乗った新幹線の疲れも吹き飛んだかのようでした (#^^#)

こんな機会もめったにないので、営業所の前でみんな揃ってハイポーズ! まもなく、営業一課の大鹿さんの営業車に乗り込み、いよいよ三島食品様へ出発で~す。

工場で出会った大きな楠と小さなお友達

三島食品様は、広島市内に2つの工場をお持ちなのですが、今回は広島市中区南吉島の本社工場の方へおじゃまさせていただきました。到着するとまず目に飛び込んできたのが、門のすぐ脇にそびえ立つ立派な楠です。

じつはこの楠は、同社の経営理念と関係する大事なシンボルなのですが・・・おっと、ここでいきなり「小さなお友達」が目の前を横切って行きました。見学用の白衣に身を包んだ、工場見学の生徒さんたちです。到着早々、なんとも可愛いらしい光景に癒された「気になる隊」でした。

ふりかけの「ゆかり」誕生と代表商品になるまで

さて、今回お話を伺うことができたのは、広報担当マネジャーの佐伯様、広島工場 第二工場職長の藤岡様、そして観音工場統括責任者の漆原様も、わざわざ本社に足をお運びいただきました。まずはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げたいと思います。お忙しい中、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。それでは早速、質問を始めさせていただきます。

広報担当マネジャー 佐伯様

観音工場 統括責任者 兼 生産技術 漆原様

第二工場職長 藤岡様

― 先ほど、工場見学の子供さんたちをお見かけしたのですが、毎月どの位の方がいらっしゃるのですか?

「9月から12月の期間は、ほぼ毎日、工業見学希望の生徒さんたちを受け入れています。じつは、広島市の小学3、4年生が勉強する社会科の教科書の副読本に、当社のことが載っているんですよ。社名は出ていないのですが、『ふりかけはどのようにして作られているのか、工場を訪ねて調べてみることにしました』といった感じで、教材のひとつになっているんですね。最近は工場見学がある種のブームのようにもなっていますが、うちはもう40年以上も前から工場見学を受け入れているので、おそらく広島市の食品関係の工場では、かなり早かったんじゃないかと思います」

── なるほど、工業見学も授業の一環というわけですね。案内役は専門の方がいらっしゃるのですか?

「社員が順番に担当しているんです。というのも、当社は創業時から『広告宣伝をしない』というのをポリシーにしておりまして、その分を原材料費に投入し、より良い商品を生産しようと考えてきました。とは言っても、当社のことを知っていただく必要がありますから、工場見学は唯一無二のお客様とのコミュニケーションみたいなところがあるんです」

「ゆかり」ヒットの裏側

── 素晴らしいポリシーですね! その結果、広島で御社の商品を知らないお子さんはいない、ということですものね?

「はい。学校給食にも『ゆかり』など、20種類以上のふりかけをご提供していますから、子供たちの認知度はバツグンだと思います(笑)。と言いますか、そもそも『ゆかり』という商品が世に出たのは、給食がきっかけなんですよ。

『ゆかり』がまだ、一般に市販されていない時代の話ですが、給食で食べた『赤いご飯』を家でも作ってと、母親にせがむ子供が続出したようでして・・・『赤いご飯』とは何ぞや?と、お母さん方が学校に問い合わせをして、ようやくその正体がわかったわけなんですが、なんせ他では手に入りませんから、最初の頃は学校勤務の栄養士さんが、こっそりお分けしていたみたいですよ。しかし、希望者が増えてくるとそうもいかなくなって、当時『ゆかり』を学校に卸していた業者さんに、これ小分けにして発売したら売れるわよ、と教えてあげたそうなんです」

── 事実は小説より奇なりという言葉もありますが、ヒット商品誕生の裏側には、こうしたおもしろいストーリーがあるものなんですねぇ~。

「もっとさかのぼれば、『ゆかり』はたった一人の営業マンの情熱で生まれた商品なんです。その頃、名古屋で梅干しを漬けた時の赤しそを刻んだ漬物が売れているという情報を彼が掴み、当時の社長(創業者である三島 哲男)に、うちでも売ったらどうだろうかと、何度も直訴していたそうです。しかし、社長は『うちはふりかけ屋であって漬物屋ではない』として、頑として聞き入れなかったようですが、彼の熱意は半端なものではなく、とうとう社長は『乾燥させてふりかけにできたら商品化しようじゃないか』と、高いハードルを与えながらも、彼の訴えを聞き入れたみたいです。

そこから乾燥技術とノウハウの蓄積に時間が掛かり約一年の歳月が流れたそうですが、ようやく商品化することに成功し、それが『ゆかり』の原型になったと聞いています。しかし、世に出してみると意外なほどに売れなかったようで(笑)。当時のふりかけは魚粉や鰹節のような動物性タンパク質を主原料としたものばかりだったので、『ゆかり』のような植物性原料のふりかけは馴染みが無いため手に取っていただきにくく、厳しい船出となっていました。それが学校給食の献立に取り入れられるようになり、先のような経緯でヒットしていくわけですから、本当におもしろいものですよね」

イワキのポンプ導入までのゆかり

── その「ゆかり」の製造ラインで、イワキのポンプが使われているわけですね! まずは、イワキとの出会いから、お聞かせいただけますか?

「イワキさんとのお付き合いは、かれこれ24~25年になると思います。ふと気がついたら、イワキさんのマグネットポンプが現場にありました(笑)。年に1~2回は部品交換などもあってポンプの存在を意識しますが、ふだんは特にトラブルもなく正に『物言わぬ』感じで、静かに働いてくれています。

『ゆかり』の製造ラインでは専用乾燥機がかなり重要な仕事をしているのですが、ご存じのように細かい商品なので、その乾燥機を洗浄するのはとても大変な仕事なんです。複雑な構造なので、従来は手作業で洗浄していたその乾燥機を『自動洗浄』できるようになったのは、イワキさんのおかげなんです」

マグネットポンプ MD型

── イワキの元担当者にも、色々ご相談いただいていたと伺っていますが・・・。

「はい! イワキさんには、無理難題も含め(笑)、色々とご相談に乗っていただきました。たとえば、『しそやわかめを洗うために、一定の濃度で塩水をつくれないか?』などというご相談をしたこともありましたね」

── 相談の結果、イワキはお役にたてたのでしょうか?

「うまく行ったことも行かないこともありました(笑)。当社のオーダーはすべて専用機への対応ですから、洗浄機の稼働テストをするチャンスは1日1回しかないわけです。イワキの担当者さんには、工場の仕事が終わる6時頃から来ていただき、うまく行かなければ課題を持ち帰り・・・半年から1年かけて調整していただいた装置もあります。この後、工場見学もしていただく予定なので、詳しい話はまたその時にでも」

ふりかけから広がる可能性『ゆかり®ペンスタイル』

── 話は変わりますが、少し前に「ゆかりペンスタイル」が随分と話題になりましたよね。

「皆さんご存じの『ゆかり』をペン型容器に詰めた製品なのですが、発売は2014年11月。当初は銀座にある広島県のアンテナショップと広島県内にある道の駅の2カ所で、月に100本程度、ある意味ひっそりと売られていた商品でした。

それがある時ネットで話題になると、あれよあれよという間に拡散され、しばらくは品薄状態が続いたので、その希少価値からさらに人気に火が付いたみたいなところがあるのかもしれません」

第二工場職長の藤岡様は、同製品の開発段階から携わったお一人ということで、まさに現場の“生”の声をお聞かせいただけました。

「発売当初は、すべて手作業でペン型の容器に詰めていたものですから、尋常じゃない手間でした。当然現場からは『カンベンしてほしい』といった不満の声が私の元に届き、そこをなんとかお願いしながら製造を続けてきたわけですが・・・2015年からネットショップでも発売を開始したところ、『これはおもしろい!』ということでSNSなどで話題となり、在庫が一晩で売り切れたこともありました。2016年からは関東工場に生産ラインを設け、すべて半自動化して万全の体制をとっています。しかし正直なところ、“一発屋”で終わるかと心配していたのですが(笑)、おかげさまで、今ではこの『ペンスタイル』も、定番商品のひとつとなっています」

“一発屋”どころか、今では『ゆかり®ペンスタイル』の仲間として、『あかり®料理素材ピリ辛たらこペンスタイル』や青じそ味の『かおり®ペンスタイル』が新しく発売され、三姉妹としてご活躍中です。

── ところで、非常にユニークなこの商品アイデアは、どなたの発案なのですか?

「前社長の三島 豊のアイデアなんです。うちの会社は社長の発案でも役員が平気で反対しますので、一時は商品化をあきらめたこともあったみたいですが、自ら試作品を持ち歩いて色々な方にお見せすると、とても反応が良かったので、これは人と人とをつなげられるコミュニケーションツールになると確信していたみたいですよ。二代目だった三島は“変な会社になろう!”と、さかんに言っていました(笑)。ふりかけ屋であっても、モノだけではなく、コト的価値を提供できる会社を目指していたんですね。

ちょうど今年(2017年)の4月からは、社長が末貞 操に交代していますが、現社長は『見える化』を盛んに提唱し、社内の悪い部分も包み隠さず、いや悪い部分こそ『見える化』しようと、全社を挙げて取り組んでいるところです」

── なるほど(納得!)。それがこちらの事務所の壁や廊下にびっしりと貼られた掲示物に表れているわけですね。

思わぬところで“手塚治虫”先生発見!!!?

── 先ほどから「見る代」ちゃんと「見え太」くんのキャラクターも、気になって仕方ないのですが、これはどなたが描いてらっしゃるのですか?

「じつは“彼”なんです!」と、広報担当マネジャーの佐伯様の目線の先には・・・

QCに活躍する「見る代」と「見え太」

「見る代」と「見え太」の生みの親 M・シロー様

えっ? 社内にマンガ家さん!? じつはこの方、三島食品様のれっきとした社員さんでして、いただいたお名刺には「AMP Creator M・シロー」様とありました。あまりに“気になった”ので、少しだけご本人のお話を伺うことにしました。

── お名刺にある「AMP」というのは・・・

「私のつくった造語なんですが、『アニメコミック・メンタル・プロモーション』という意味でして、現在は、皆さまのハートに響く絵を描く仕事を専門にしています」

この「M・シロー」様、じつは、営業職として採用されたそうですが、元々は漫画家を目指していた時期もあり、その才能を発見した会社側の意向で、今は「社内漫画家」さんとして、ご活躍なのであります。

「私の仕事は社内の掲示物ばかりでなく、たとえば、工場見学に来てくださった取引先のお客様をイラストに描き起こさせていただき、それを額に入れて、後日担当営業がお届けする、なんて活動もしています。私は美女と美男しか描けないので、かなり喜んでいただけるみたいです(笑)」

素晴らしい作品ですね! 自分をこんなふうに描いてもらえたら、誰だってうれしいに決まってます。

そういえば、先ほど廊下にこんな貼り紙を見つけました。

同社では「A面/B面活動」というものを推奨されているそうですが、「A面」は通常業務、「B面」は趣味や特技という意味。つまり、担当している仕事以外に、たとえば食べることが大好きで味覚に自信がある人は「味覚マイスター」を名乗るなど、それぞれの“好き”を仕事に活かす道を追求しているのです。

これぞ“活人経営”ですね! 良い製品は良い人から生まれる・・・そんな言葉がぴったりな三島食品様の姿勢に、すっかり心を奪われた「イワ気になる隊」なのでした。さて、この後はいよいよ「工場見学」です。“気になる”この続きは、次号の<<後編>>にてお届けしたいと思いま~す(^^ゞ

 

●「ゆかり」は、「三島食品株式会社」の登録商標です。

三島食品株式会社

創業 1949年(昭和24)1月
本社所在地 広島市中区南吉島
国内製造拠点 広島工場・観音工場(広島市) 関東工場(埼玉県坂戸市)

 

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