ポンプに賭けた男たち 第39話
ケミード定量ポンプの開発で「発明大賞池田特別賞」受賞

残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマを、お伝えしていきます。

価格・耐久性・性能を徹底追及!「往復動定量ポンプ」の開発に挑戦

前回は、「ケミカルポンプのデパートになる!」と声高らかに宣言したイワキのポンプが、日本の高度経済成長を陰ながら支えた一例として、「一軸スクリューポンプ」と「エアーポンプ」に注目しましたが、もうひとつ、忘れてはならないのが「往復動定量ポンプ」の存在です。

じつはイワキは、1960年代中ごろから、往復動定量ポンプの開発を手がけていました。当時、プロセス用の定量ポンプは、まだまだ輸入品が主流でしたが、コスト面でも汎用性においても、石油化学をはじめとする製紙・繊維・食品・鉱業など、著しい発展をみせている国内産業の需要に即しているとはいえないという状況でした。

そこに時代のニーズを感じ取ったイワキは、なんとかプロセス向けの往復動ポンプを国産化できないかと考えたわけですが、その開発にあたり、最も大きな課題は「モーターの回転運動を減速し、往復運動に変換する駆動部」の機構でした。この部分こそが、価格・耐久性・性能を決定するため、極カシンプルで安定性のある機構でなければならなかったのです。

イワキの技術部門は、国内・海外の既存メーカーのクランク、スプリングバック方式の駆動機構を徹底的に調査し、そのすべての問題点を洗い出すことから始めました。少しでも条件に近づく可能性があるものはすべて図面化し、丹念にデータの収集をし、さらにアイディアをまとめていくという地道な挑戦が続くことになります。

心からの努力は必ず報われる!?

SLクランク

そうした挑戦の中にあっても、イワキは自らの新しい駆動機構の開発を確信していました。なぜなら、イワキには、一人で考え込むのではなく、足を使って広く情報を集める力と、そして何よりも“あきらめない心”があったからです。

文字通り世界中の駆動機構を徹底的に調査し、そこからイワキ独自の基本構想をまとめ、いかにシンプルに、かつ低コストに製品化するかを悩みに悩み、加工や製作の解決策を求めて東奔西走する日々が続きます。そしてついに、イワキ技術陣は、全く新しい「SLクランク」駆動の機構を発明したのです!

この「SLクランク」の発明により、低コストな駆動部が実現したことは、イワキにとっての大きな財産となりました。ポンプヘッドには、プランジャー、油圧ダイヤフラム、直動ダイヤフラム、ベローズなどを製作し、耐蝕性のある金属、樹脂、ゴムを使用して、さらなる工夫を加えていきました。

こうして完成した「ケミード定量ポンプ」は、1978(昭和53)年、日本発明振興協会と日刊工業新聞社共催の、第3回「発明大賞池田特別賞」受賞という、思ってもみなかった栄誉を手にすることとなりました。

・・・この続きは次号のお楽しみということで。

SLクランク機構の原理

SLクランク機構はポンプストローク長を調節するための機構です。この機構は、同じ偏心量をもった偏心ディスク、SLクランク及びカップリングディスクから構成されています。このストローク長の調節をすることにより、ポンプの吐出量調節を行います。

ストローク長0%にした場合
SLクランクを下げた状態

ストローク0% SLクランクを下げたとき

SLクランクの回転中心に、偏心ディスクの中心が一致した状態になります。(SLクランクと偏心ディスクの回転中心の偏心量εとが打消しあって、偏心量が0となります。)

ストローク長100%にした場合
SLクランクを引き上げた状態

ストローク100% SLクランクを引き上げたとき

SLクランクを引き上げると、偏心ディスクはSLクランクのネジによって回転します。このとき、偏心ディスクはSLクランクの回転中心から偏心し、偏心量の2倍のストローク長になります。(図は、偏心ディスクが180°回転し、偏心量が2εとなった状態。)