このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指しつつ、クスッと笑える「今日の一句」づくりにも、力を注いでおります。

今回の用語は>>>>> ラジアル推力

【ラジアル推力(軸推力)】 radial thrust
半径方向推力のこと。「ラジアル」とは「放射状の」「星形の」という意味で、インペラが回転する際に、軸に直角方向にかかる推力のこと。

前回は「スラスト推力(軸推力)」について解説しましたが、セットで覚えておいていただきたいのが、この「ラジアル推力」です。なぜならスラストとラジアル2つの推力は、「回転体の宿命!」とも言えるほど、必ずや発生するものだからです。

「私はスラスト好きだから、ラジアルはやめとく〜」とか、「今日は断然ラジアル気分♪ だからスラストなしで回りますっ!」なんてことは一切ありませんし、できるはずもありません。

プロペラなどの推進器が回転すれば必ず、スラストとラジアル、2つの力が発生します。スラスト推力が「前に進もうとする力」であることは、前回説明していますので、ラジアル推力とは一体どんな力なのか? 皆さんと一緒に紐解いていきたいと思います。

ここでもはやお馴染みとなった「洗濯槽の中」をイメージしてみてみましょう。

ぐるぐると回転することによって発生する遠心力で、水は四方八方に容赦なくブンブンと飛ばされていきます。次から次へとやってくるインペラ(羽根車)の羽に、投げ飛ばされて行く、いえ、放り出されて行くといった方がいいのでしょうか。

とにかくスゴイ勢いでゴーッと、かき回されて行きます。水にしてみれば「いやぁ〜 目が回るぅ〜\(>o<)/」といった感じでしょう。

洗濯槽の中

この四方八方に飛ばされた水がケーシング内でぐるぐる回るとき、設計点(=最大効率点)流量ではインペラ周囲の流速(圧力)分布が全周同じになるのですが、設計点以外の流量ではインペラ周囲の圧力分布が不均一になり、その結果インペラが軸を直角に押す力が発生します。この力のことを「ラジアル推力」といいます。

回転軸に直角方向に起こるので、「ラジアル=放射状」というわけです。ラジアル推力は運転点が変わるとその大きさと方向は変化します。

では、ラジアル推力がポンプの中で発生したらどうなるかを考えていきましょう。

インペラがご機嫌に回転できるのは、軸となるスピンドルとベアリングがしっかりと支えているからです。マグネットポンプを半分にスパン!と切った状態にするとよくわかるのですが、じっとしていても、スピンドルにはインペラ自身の重さや、マグネットキャンの重量が鉛直にかかっています。

ポンプが動き出すと、内部はどうなるでしょう? もちろんインペラが回転し、液体が内部に入ってきて、それをいい塩梅で吐出して行く・・・だって、ポンプなんだもん・・・

どうか、そのポンプとしての本能をいかんなく発揮していただきたいものですが、実はこのときポンプ内部では、結構大変なことになっています。

さきほど「洗濯槽の中」の話をしましたが、カンの良いあなたは、もうおわかりですね。そうです! インペラの回転によって起こる「全方位ぶんぶんパワー」と、それにより発生する「ラジアル推力」がインペラの周囲で炸裂しているのです!

このラジアル推力は、スピンドルに対して直角に働きます。ということは、スピンドルは、本体の重量の他に、このブンブンと水をかき回す力も相当かかってくるわけです。

ラジアル推力

さらに、「常に前のめり」の「スラスト推力」も発生しているのですから、えらいこっちゃです。四方八方に「キャ〜」と弾けるパワーと、グイグイと前に引っ張ろうとする力。この2つの異なる力に耐え続け、踏ん張り続けなければならないのですから、スピンドルに求められる体力って、相当なものですよね。これはただの「棒」にはできない仕事です。今度、スピンドルを見かけたら、「よっ、いつもがんばってるね!」「ご苦労さま」と、心からのねぎらいの言葉をかけてあげようではありませんか。

でも、彼(←スピンドル)は一人ではありません。彼に寄り添い、包み込んでくれる優しい相棒がいるんです。それがベアリング(ジャーナルベアリング)です。前のめりのインペラを優しくいさめるのがマウスリングやライナーリングだったように、スピンドルが「回転」という仕事をまっとうするためには、ベアリングという存在が欠かせません。

スピンドル

ベアリング

どんなモノでも回転摺動すると必ず摩擦熱が生じ、高速回転すればするほど、すぐに「アッチッチ」になってしまいます。もちろんポンプのスピンドルも例外ではなく、放っておけば高熱を発します。

熱いハートで回り続けるその心意気は素晴らしいのですが、勝手にじゃんじゃん発熱されると、迷惑なのはその周囲です。「ちょっと熱いよ」くらいならまだしも、最悪、その熱にヤラレて溶かされたり、焼き付いてしまうかもしれません。そんな熱によるポンプの内部崩壊が起きてしまったら、ポンプの使命が全うできなくなってしまいます。

そんな熱いハートをしっかりと受け止め、なおかつスピンドルが滑らかに回転できるように支えていくのがベアリングの役目。ほとんどスポットライトが当たらない地味な存在ではありますが、名脇役がいてこそ主役が輝けるように、ベアリングはポンプにとって大切な存在なのです。

スピンドルとベアリングの相性がとてもよく、しっかりとインペラを支えていれば、マグネットポンプは静かにスムーズに動き続けます。インペラ、スピンドル、ベアリングのバランスが良ければ、ポンプは静かに粛々と仕事に集中できるのです。しかし、一カ所でもバランスが崩れてしまうと、余計な振動が起きたり、発熱したりと、内部的に「困った事態」が起きてしまうのです。

よく「役者が揃う」といいますが、ポンプにとっても同じこと。役者がすべて揃えば、最高のポテンシャルを発揮します。役者とは、それぞれの部品の素材だったり組み合わせだったり、さらにはポンプの流量、設置場所、配管の角度など多岐にわたりますが、すべてがバシッと揃えば、「よっ!待ってました!」とばかりに、ドキドキするようないい仕事をしてくれるわけです。

このポンプが働くための「トータル環境のバランス」をいかに作り出すかが、ポンプ屋の腕の見せ所になってくるんですね。

今日の一句

グイグイと迫る力に耐えるには、人は辛抱、ポンプは心棒。

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