このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指しています。文末の「今日の一句」にもご注目ください。クスッと笑えて記憶に刻まれるよう、毎回魂を注いで作っております。

今回の用語は>>>>> 残留塩素

【残留塩素(ざんりゅうえんそ)】
殺菌効力のある塩素系薬剤を水中に投入し、その水の中に塩素が「どのくらいの濃度で存在しているか(残っているか)」を指す。残留塩素には「遊離残留塩素(ゆうりざんりゅうえんそ)」と「結合残留塩素(けつごうざんりゅうえんそ)」がある。単に残留塩素と言った場合、(通念的には)遊離残留塩素の事を指す場合が多いが、正確には遊離残留塩素、結合残留塩素合わせて「残留塩素」または「全残留塩素」という。

はい、みなさま、大変長らくお待たせいたしました!「ポンプなるほど・用語編」、通常運転再開!です。

さて、前回のイントロダクション(リンク)で申し上げたとおり、これからしばらくのあいだ「残留塩素」にまつわる用語に、熱い視線を注いでまいります。その幕開けを飾るのは、もちろんこの言葉。そう、「残留塩素」です!!

って、ズバリそのまんまですね。でも、何事も最初の一歩が肝心だと申します。まずは言葉の意味と定義をしっかりインプットしておきましょう。

なんで「残留」っていうの?

「残留」という言葉を辞書で引くと、「残りとどまること。なくならずに残っていること」(コトバンク デジタル大辞泉より)とあります。日常では、野菜に残っている農薬を「残留農薬」といったり、野球の選手がチームに残ることも「残留」を使います。あ、サッカーでも使いますか。「果たして◯◯、J1残留なるか?!」といった感じに。

残留塩素も「残っている塩素」ってことですが、なぜわざわざ「残っている」にこだわるのかというと、塩素の“濃度”は刻々と変化するからなんです。

「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず・・・」というのは、『方丈記』の有名な一説ですが、一見同じように見えても、その中身は変わっているんだよ、という世の中の「無常」を表した名文です。

「常(つね)」なんかないさ! みんな変わっていくのさ! じっとなんかしてないのさ! ってことですね。鴨 長明(かものちょうめい)、さすがです!

すべては変化する。川の水も人間も・・・塩素だって同じです。ひとたび入れたらジーッとその場に留まる塩素などひとつもなく、結構ジャンジャン飛んでいってしまいます。そう、塩素は飛んで行く!

♪ぴぃひゃららららららららぁ〜♪ というのは名曲「コンドルは飛んで行く」がですが、塩素もコンドルのように大空、というか大気の中に溶け込んでしまいます。ま、早い話がだんだんと薄〜くなってしまうんです。

塩素濃度が薄くなるとどうなるか? ものすごくざっくり言うと、こんな感じです。

[殺菌効力が弱くなる]→[雑菌たちの強い生命力に太刀打ちできなくなる]→[雑菌たちの勝利]→[非衛生的な環境になる](泣)

塩素を戦士に例えるならば、菌と戦い、キレイと安全をキープするために、「今、水中に塩素戦士は何人、残っているんだ?!」ということは、とっても大切なことです。しかし、塩素を数でかぞえることは現実的には無理な話なので、残っている塩素の濃度で判断しているわけです。

「残留」にこだわるワケ

はぁ〜。長かったですねぇ〜。まさか「残留」だけで、ここまで引っ張るとは、残留塩素もさぞビックリしていることでしょう。話はあとちょっとだけ続きますので、もう少しお付き合いしてください。

「塩素がどれだけ残っているか?」にこだわるには、ちゃんと理由があります。それは・・・使用する場面によって塩素濃度が決まっているから! そして、誰が決めているかというと・・・国。そう、日本です!

水道水に塩素を入れて殺菌消毒していることは、皆さんもご存知だと思いますが、水道水水質基準は水道法第4条に基づいて厚生労働省令によって定められています。「水道水は、水質基準に適合するものでなければならず、水道法により、検査が義務づけられている」のです。

水道水の残留塩素濃度も、この水道法により

「遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること」

が義務付けられています。【水道法第22条に基づく水道法施行規則(厚生労働省令)第17条3号】

ここで「残留塩素」の前に「遊離」と「結合」がくっついた新しい言葉が出てきましたが、その違いは塩素の成分と殺菌作用の強さです。ざくっと説明すると

遊離残留塩素(ゆうりざんりゅうえんそ)<殺菌作用が強い!>
水中で次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンとして存在するもの。

結合残留塩素(けつごうざんりゅうえんそ)<殺菌作用が弱い!>
遊離残留塩素とアンモニアが結合して生成される物質。
モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン

※注):「塩化物イオン(塩素イオン)」は残留塩素とは異なる物質です。

遊離残留塩素と結合残留塩素については、次回詳しく解説しますが(乞うご期待!)、ここでは殺菌能力において「遊離の方が有利!」くらいに、軽く覚えておいていただければ結構でございます。

WHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインでは、遊離残留塩素は5mg/L。5mg/L以下ならば「飲んでよし」としてます。それにくらべて日本の浄水場での残留塩素は、概ね0.7mg/L~0.9mg/L程度に調整して供給されています。世界基準とは桁違いに「少なっ!」というところに注目です。

ちなみに1mg/Lは、一般家庭の風呂の浴槽(約200L)に、0.2gの物質が含まれている時の濃度です。水はだいたい1ml=1gですから、どんだけ、ちょびっとなのか、わかりますよね。日本の水道水はこのめちゃめちゃ厳しい基準をクリアしているのですから、世界でも有数の「安全な水」だといえるのです。

水道水以外にもプールや公衆浴場、旅館、スポーツクラブなどにある循環式温泉、公園の噴水や人工池なども残留塩素濃度は定められています。ホント、日本ってきっちりしていますよね。

プールにおいては厚生労働省が定める「遊泳用プールの衛生基準」と、文部科学省「水泳プールに係る学校環境衛生基準」が設けられており、いずれも厳しく管理するよう指導しています。循環式温泉や噴水なども厚生労働省の管轄です。

このように私たちの生活の中で、もはやかかせないのが残留塩素。水の中に残った塩素たちが力を合わせて菌と戦ってくれているシーンをイメージすると、「残留塩素、がんばれ〜」という気持ちが湧いてきませんか?

人知れず見えないところで菌と戦う「残留塩素」に、イワキは改めて敬意を評したいと思います。がんばれ、残留塩素!

今日の一句

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みんなのために「菌」と戦う 正義の味方 残留塩素

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