このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指しています。文末の「今日の一句」にもご注目ください。クスッと笑えて記憶に刻まれるよう、毎回魂を注いで作っております。

今回の用語は>>>>> オーバーフロー型とインライン型

残留塩素計の計測方法。どちらも残留塩素の量を正しく検出するために必要な一定の流量を作り、この流れにセンサ部分を当てて計測する。

【オーバーフロー型】
内容物が容器からあふれる状態(Overflow, Over flow)を利用して測定する。「捨て水」が発生し、測定した水は排水される構造。

【インライン型】
配管ライン中(In line)に取り付けて計測する。主に循環配管ラインに取り付けるため、捨て水が発生しない。

まず本題にスムーズに入るために「残留塩素計の流量特性について」説明します。

残留塩素計の流量特性について

これまでのブログにも説明がありましたが、残留塩素計はセンサの作用極表面での塩素の還元反応をとらえ、この時に起こる電子のやりとりに起因する作用極と対極間に流れる電流を測定することにより残留塩素濃度を知ることができます。

  • 作用極
    Cl₂ + 2e- → 2Cl-
    作用極表面で塩素が電子をもらって、活性の無い塩化物イオンに還元される
  • 対極
    Ag → Ag+ + e-
    対極の銀が電子をはなして、銀イオンに酸化される
残留塩素濃度の計測原理

作用極の表面で塩素の還元が行われると、作用極表面の塩素は無くなってしまい、もう電流は流れなくなります。従って、次の反応を起こすためには、作用極表面に塩素を含むサンプルを運ぶ必要があります。

この理由から作用極表面に強制的に水を運ぶ、つまり流速を与えて、作用極表面に水を送ることにより、作用極表面で常に塩素の還元反応を(たくさん)起こさせる事が必要になってきます。

この時、作用極表面の塩素の反応量は流速によって反応する量が変わってしまうため、以下のような関係が成立します。

流速が多い  → たくさん反応する → 電流大
流速が少ない → 反応が少ない   → 電流小

[ 流量特性がある ]

つまり残留塩素計には流量特性があるため、残留塩素濃度は一定の流速で測定する必要があります。早い話、じっとしている水相手では、残留塩素計の実力は発揮できないのです。(基本的に静止した水は測定できません)

その水の流れを作り出す方法が、今回の用語の「オーバーフロー型」と「インライン型」の2つ。説明すると「あふれるタイプ」と「捨てずに測るタイプ」ですが、どこがどう違うのか? 細かく見て行くことにしましょう。

あふれさせて測る オーバーフロー型

百聞は一見に如かず。まずは、オーバーフロー型の構造図をご覧いただきましょう。

オーバーフロー型フローセル 構造概略図

残留塩素計のセンサがあるのは、測定槽です。検水調整槽へ水を供給し、センサが設置してある測定槽に水を落として、水の流れを作っています。

しかしながら、正しい測定をするためには、水が流れるだけではダメで、「流速を一定にする」必要があります。なぜなら残留塩素計は、センサの作用極にあたる流速が多ければ、残留塩素信号は大きくなり、少なければ残留塩素信号が小さくなる特性があるからです。

そこでオーバーフロー型は、検水調整槽の水をオーバーフローパイプに溢れさせて水位を一定にし、ノズルを介して測定槽に落ちる水量を一定にしています。。そのため「一定水頭式」と呼ばれることもあります。常に水の(頭の)高さが同じなんですね。

オーバーフロー型は常に水を溢れさせ、水位が一定な状態で測定しますから、センサに当たる水の流速はいつも一定。測り終わった水(これを「捨て水」といいます)も、検水ドレンより排水されていきます。

配管などを変更せずに設置できるうえ、流量を安定させるための補助的な装置を必要とすることなく、常に一定の検水流量がキープされる構造ですので、扱いも簡単です。

浄水・配水・給水などの水道管理や、食品工場で使われる殺菌水管理などで多く利用されています。

捨てずに測る インライン型

一方のインライン型は、検水調整槽を用いず、配管に直接設置します。流量を一定に調整するため、定流量弁や手動バルブを設ける必要があります。ポンプや循環配管から吐出した水の流れを利用して計測し、その後、水はまたポンプの吸い込み側や循環配管に戻されます。

インライン型フローセル 構造概略図

オーバーフロー型のように「捨て水」が発生しないので、経済的ではありますが、設置工事で配管を変更する必要があり、流量を安定させるために補助的な装置も必要になります。

プールや浴槽などの循環ろ過設備に向いている構造です。

流量特性

残留塩素計は、流量変動により指示値の変動を起こす流量特性を有しています。オーバーフロー式フローセルを使用した場合は、検水調整槽の水位をオーバーフローレベルに保っておけば、全体のサンプル量は、毎分1.2L~2L程度でセンサが設置される測定槽に流れる流量は一定になります。

インライン型フローセル使用の場合は、検水調整槽がないために流量調節バルブや定流量弁を使用して、ビーズの噴流範囲を参考に流量を調節する必要があります。

インライン型フローセルの一例として流量特性図を示します。下図の場合、流量により指示値は変動するため、流量を1.3L/minにすることが必要になります。

流通型フローセルの流量特性

今日の一句

流れがないと測れない 流れがあるから役に立つ
残留塩素計は意外とアクティブ

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