残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマを、お伝えしていきます。

「ケミード定量ポンプ」に寄せられた新たな期待

前回は、あきらめない心を持ったイワキの技術陣が、全く新しい「SLクランク」駆動の機構を発明したというお話をしました。その開発グループの責任者は、後に取締役生産本部長を務めた人物。同じくリーダーは取締役技術本部長となるなど、まさにイワキの技術面を支えていくことになります。また、同グループには、後に開発部長となった者や、技術管理、生産管理の部門で中心となる者たちも参加しており、開発の一役を担っていたことを考えると、イワキにとって重要な技術開発であったことは言うまでもありません。

1978(昭和53)年、その駆動機構を駆使した「ケミード定量ポンプ」が、第3回「発明大賞池田特別賞」という思ってもみなかった栄誉を手にすることになったわけですが、じつはその6年ほど前、1972(昭和47)年の秋に、広島にあるイワキの代理店から、瀬戸内海と河川周辺の大型水理模型をつくる計画があり、その模型にイワキの「ケミード定量ポンプ」を使うチャンスがあるという話が持ち込まれていました。

もちろん、担当者は急いで打ち合せのため現地に向かい、詳しく聞き取りを始めます。そして、瀬戸内海沿岸周辺は1965(昭和40)年ころから急激な重化学工業化が進んだために、工業排水による漁業被害が問題となっているという事実をつかみました。瀬戸内海をとりまく府県や沿岸市町、さらには政府の代表が参加して、瀬戸内海を守るにはどうしたらよいか、知恵を出し合い話し合いを重ねた結果、内海の水質汚濁を未然に防ぐためには、すでに国内外で成果をあげている「水理模型実験」が最も有効であるという結論に達したようでした。

瀬戸内海の水質を守れ! 広島に世界最大の水理模型を

1971(昭和46)年、これを受けた当時の通産省が、広島県呉市の中国工業試験所に水理模型を設置する計画を進めていくことになりました。

中国工業試験所(広島県呉市)

ちなみに、水理模型とは、実際の瀬戸内海と同じ海流を再現した模型のこと。模型の瀬戸内海に注ぎ込む大小73ある河口部分には、着色された水の入ったタンクが設置され、このタンクから流れる水の量は、実際の河川の流量に基づいてコントロールされるわけですが、そのコントロールのために「定量ポンプ」が必要だというのです。さらに、73カ所のポンプすべてを中央制御盤でコントロールするシステムも必要とされていました。

こうして着色された水の動きのデータをとることで、実際の瀬戸内海が河川からの工業排水、生活排水などでどう影響を受けるかを検証し、汚染の予測、予防をするという壮大な実験装置が水理模型です。

実験場の建設は1972(昭和47)年2月に開始され、ここから「ケミード定量ポンプ」が瀬戸内海の水質を守れるかどうかの熱いドラマが始まっていくわけですが・・・この続きは次号のお楽しみということで。

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