創業40周年の社史(1996年刊行)をもとに、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマをお伝えしてきました。
1956年(昭和31年)4月10日、この世に産声を上げたイワキも、1968年(昭和43年)には直販拠点の第1号である大阪営業所を開設。そこから代理店と二人三脚で全国へ販売網を広げていったところまでを、前回の第17話まででお話してきましたが、その物語の中で幾度となく「上條」という名前が登場したことをご記憶の方も多いのではないでしょうか?

1964年(昭和39年)、それまで理化学機器とケミカルポンプの2本立てだった営業部を統合し、その営業を一手に任されたのが、入社6年目にして弱冠29歳の上條照彦でした。

「日本中にイワキのケミカルポンプを広めてやる!」彼の熱い思いは、この後日本を飛び出して海をも渡っていくわけですが、そのお話に入る前に、どうしても本人の口からイワキの歴史を語ってもらいたい・・・そんな思いを募らせた我々メルマガ編集部、気になりだしたらもう止まらない「イワ気になる隊」は、現在OB会の名誉会長である上條さんが、本社を訪れるという情報をキャッチし、突撃インタビューを敢行したのであります(^^ゞ

編集部 「今日は突然すみません。これまで『ポンプに賭けた男たち』を編集してきて、まさにイワキの立役者といえる上條さんにお会いしてみたくてたまらなくなりまして(笑)」

上條 「ああ、これ40周年の社史だよね。じつはこれを編纂するにあたって、事細かに記録していた営業部の議事録が随分と役に立ったみたいでね。そこから事実関係がいろいろ拾えたから、書き手も脚色が加えやすかったんじゃないかな(笑)。かなりカッコよく描かれちゃったみたいで、なんだか照れくさいよ」

社史によると「学生時代はラグビーと柔道ばかりやっていて、押しが強めの鋭い目つきの若者」となっており、しかも敏腕営業統括として日本中にケミカルポンプを広めてきた人物とあれば、さぞイカツイ人物だと想像される方も少なくないと思いますが・・・じつは「映画俳優か?」と見まごうばかりのカッコよさなのです(#^^#)

上條 「仕事も遊びも『カッコよく』ありたい、ずっとそう思ってきたよ。やっぱり『見た目』は大事だよね。いくらおいしい食べ物だって、見た目が悪いと美味くないでしょ。人間だって同じだよね(笑)。 子どもの頃からガキ大将だったけど、いわゆるいじめは許さなかったな。正義の味方を気取ってたのかもしれないけどね」

編集部 「社史にある上條さんは、まさに正義の味方=ヒーローですよ! ケミカルポンプというものが、まだそれほど世の中に普及していなかった時代に、日本国内のみならず海外を目指した・・・そのエネルギーはどこから湧き出てきたのでしょうか?」

上條 「まぁ、時代が良かったのは間違いないけど、イワキという会社が、何も知らなかった自分みたいな若者に、随分と勉強する機会を与えてくれたことには感謝しているよ。経営者が受けるような高額なセミナーにも気前よく通わせてくれたしね。新しいことを学んだら、実際に試してみたくなるでしょ? そういう意味では、仕事へのエネルギーは、好奇心や向上心から生まれていたのかもしれないなぁ」

創業間もないイワキは「ルートセールス」を営業方針にしていたことは「第7話」でも取り上げていますが、この「ルートセールス」にはイワキ独自の意味がありました。一般に「ルートセールス」といえば、新規の顧客開拓ではなく「既にある得意先を回るだけですよ」というくらいの意味で使われています。ところが、イワキの「ルートセールス」には『ケミカルポンプの用途を探れ』という暗黙の使命が含まれていたわけです。

上條 「国内で営業拠点を広げながら、海外営業まで任されることになったわけだけど、『route(順路)』じゃなく『root(根底/本質/根源)』を見極めよ!という精神においては、国内営業も海外営業もまったく変わらなかったよ。特にイワキは特殊なポンプを売ってたわけだから、どこに市場があるのか・・・それを見極める目が必要だっただけだね」

編集部 「それでは、海外でも『上條節』がバンバンさく裂したわけですか(@_@)??」

上條 「そうそう、当時は『生意気な日本人が来た』なんて、噂されてたらしいよ(笑)。日本の部下には『営業はペコペコする仕事じゃない』『イワキの製品に自信を持て!イイモノを教えてあげるのに、何でへりくだる必要があるんだ』なんて教えていたからね。それが海外でも通用することを、身をもって示したってところかな」

編集部 「素朴な疑問ですが・・・言葉は通じたんですか?」

上條 「いやいや、私はどこへ行っても日本語オンリー。貿易部には優秀な人間がいたから、彼に『一字一句間違わずに訳せよ』って命じて・・・さすがに『バカヤロー』は訳さなかったけど(笑)。国が違ったって人間同士! 目をじっと見れば相手がどんな人間かって、案外正確にわかるもんだし、『仕事は100%人間』だよ!

特に営業の仕事は、モノは介在しても売り買いするのは『人間』。組織も『人間』。万が一失敗したら心から謝ればいいし、誠意は必ず相手に通じる・・・おかげで海外にもいい仲間がたくさんできたよ」

編集部 「お時間が残り少なくなってきたので、まとめ的な質問になりますが、社内外の後輩たちに何か伝えたいことはありますか?」

上條 「私の時とは時代が違って難しい面も多いと思うけど、世界を相手にするような大きな仕事がしたいと思うなら『正攻法』しかないよ。道を堂々と歩きたければ、堂々とした態度で仕事をするべきだ! 日本人の謙虚さは確かに美徳だけど、へりくだるのとは違うし、もっとYse,Noをはっきり言うべきかもしれないね。

でも、絶対に勘違いしてほしくないのは、私のやり方を単純に真似しても、うまくはいかない!! なぜなら、私とあなたは違う人間で『個性』がまったく違うでしょ。仕事は人間がするものだからね」

社史にもあるように、イワキ急成長の影には多くの『人間』がいました。「営業部はサムライ揃い」などという表現もありましたが、まさに世界を飛び回っていた上條さんには、部下に手取り足取り教えている時間などなく、「自分で好きにやってみろ! 失敗したらオレが責任取るから」タイプの上司だったそうです。

しかし、彼の目はいつも『人』を見ていたことだけは間違いありません。人間にはタイプがあるので、『自分の個性に合ったやり方』を見つけない限り、決して仕事はうまく行かないと考えているのです。やり方や考え方は他者から学べますが、それを自分なりに咀嚼して『自分のやり方』に昇華させない限り成功はない・・・かなり深いお話です。

上條 「営業という仕事はとくにそうだけど、モノじゃなくて『自分』を売ることが大事。そのためには、売れる自分になるべく、自分を磨かないとね。やっぱり『カッコ』が大事なんだよ(笑)。あとは、誠意と真心かな。言葉にすると陳腐かもしれないけど、『信頼関係』が築けて、初めて仕事がうまくいく。それは取引先でも社内の上司・部下の関係でも、全く同じだね」

国内も海外も同じ、社内も社外も同じ、上司も部下も同じ・・・全体を俯瞰しつつ、自分なりの視点で眺めると、世の中はどこまでもシンプルなのかもしれません。まだまだ時間が足りずに、伺いたいことはたくさんありましたが、「思い切り仕事してきた人って本当にカッコいい!! 自分ももっとがんばろう!」インタビューを終え、かなり前向きな気持ちになれた冬晴れの午後でした。

(取材&執筆:有限会社ティー・キューブ)

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