残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマを、お伝えしていきます。

写真の自動現像機向けに新シリーズを開発

前回は、イワキ初の自社製品となる「ケミカルポンプ第1号」が、ジュースの自販機と共に、全国へと広がっていったというお話をしました。イワキがこだわり抜いた「錆びないポンプ」というコンセプトと、マーケットのニーズが見事に合致したわけですが、次なるマーケットとして急浮上したのが、【写真の自動現像機】業界です。

話の発端は、現像用の薬品を送るために使っているポンプの「液洩れ」をなんとかできないかという会社からの引き合いでした。イワキの開発チームが、当時主流だった横型ポンプを縦型にしたらどうかという発想の転換をもって活路を見出していったことは、前回もお話したとおりです。

縦型のポンプなら、薬品タンクの上部に設置するため、たとえ液洩れが発生しても周りに影響を与えません。その上、装置全体をよりコンパクトできるのではないかと考えた結果、誕生したのが「縦型ポンプVLP型」でした。

縦型ポンプVLP型図版

こうして、1964(昭和39)年、ついにイワキは【写真の自動現像機】専用に、新シリーズをスタートさせていきました。当時、自動現像機1台あたりに装着されたケミカルポンプは、縦型ポンプVLP型と補充ポンプKB型の2種類でした。これらが小型装置で数台、大型になれば十数台使われたので、トータルで考えるとかなり大規模な市場となったわけです。

その頃、世界的にみたフィルムメーカーのトップは、イーストマン・コダック社でした。90%以上のシェアを独占し、技術面でもリーダー格だった同社を他の多くのフィルムメーカーが追いかけるかたちで、自動現像機の市場も技術も、どんどん伸びていった時代の話です。図らずも、イワキはその流れにうまく乗ることができたおかげで、ケミカルポンプの競合メーカーが出現し始めたのは、それから数年も後のことでした。

「まったく液洩れしないポンプ」の開発を決意

もちろん、「縦型ポンプVLP型」の成功は、時代背景によるものが大きかったことは事実です。高度経済成長が続く日本で、石油化学工業がどんどん発展していった時代です。ある意味、日本の経済成長と共に、ケミカルポンプの需要も高まっていったわけですが、同時にお客様の要求も厳しいものになっていきました。写真の自動現像機用ポンプがそうであったように、薬液移送の現場で起こる問題も増えていったのです。

前回第31話で紹介した横型ポンプLP型の本体は、耐蝕性のあるプラスチック製でした。

しかし、メカニカルシ-ルが耐用年数を越えてしまったり、ポンプの耐蝕性を上回る水準の薬液を送ったために、 シール部分が腐食し、液洩れを起こしてモーターが故障する、というようなケースがあちらこちらで出始めたのです。

これらの問題を解決するためには、「まったく液洩れしないポンプ」がどうしても必要でした。世の中にないのであれば、われわれが作るしかない! 以後、イワキはこの分野を探求し、開発の準備に入っていくことになります。今は一般的に「マグネットポンプ」と呼ばれる種類のポンプですが、当時の日本には、その呼び名さえありませんでした。

じつは、この「マグネットポンプ」は、イワキが日本で最も早く開発、製造、そして金型成型により量産化したものなのですが・・・この続きは次号のお楽しみということで。

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