残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマを、お伝えしていきます。

「海生研(かいせいけん)」の大プロジェクトとは!?

前回は、イワキのポンプが半導体プロセス前処理用循環ポンプからさらに別の用途へと市場を広げていった頃のお話をしました。ちょうど昭和から平成へと年号が変わった頃ですが、公益財団法人海洋生物環境研究所(通称「海生研」)へ、グループ会社のレイシーよりポンプの納入が決まりました。

最初に使っていただけた製品は、温度制御のコントローラでしたが、その性能が認められたのか、翌年には「海生研」が行った養殖漁場の飼育環境容量を明らかにするための実験装置「溶存酸素量調節装置」の納入を果たしています。

そして1989(平成元)年、「海生研」の責任者から、ある大きなプロジェクトの話が持ち込まれたのです。原子力発電所や火力発電所では、ある工程で冷却用に海水を大量に使用するのですが、使った後は温度の上がった海水をそのまま海に戻すことになります。この排水は汚水ではありませんが、温度の上がった海水が大量に流れ込むことで、周辺の海洋生物、とりわけ遡上する魚に対する影響が心配されていました。

そのために「海生研」では、異なる温度の層や異なる塩分の層(例えば、淡水層と海水層)を試験的に作り出して、魚の行動を把握して温排水の影響を検証するプロジェクトを計画していたわけですが、レイシーおよびイワキに対して、その設備と実験装置の入札に参加してはどうかと提言してくれたのです。

それから丸 1 年かけて作成した「概念設計書」は入札に通り、実験設備ごとイワキが受注することになりました。

虹色の実験装置

このプロジェクトのために、技術本部システム係から 2 名の専任者が決まり、実作業は 1990(平成 2)年内にスタートを切りました。その後、技術センターで行った 10 分の 1 の模型がうまく作動し、2 年目には実際の現場で装置とその周辺の施工にあたることになりました。

その装置には「遡河性稚魚等温度反応試験装置」という長い名前がついていましたが、その意味するところは,「海水の温度差、海水の塩分濃度差による層において、魚がどう行動するかを観察するための実験装置」といったところです。

縦 2 メートル、横 2 メートル、奥行き 60 センチの水槽内の海水を 11 層の温度層と濃度層に分け、その状態を長時間安定保持し、その中で魚がどんな動きをするかを記録しながら地道に検証データを収集していきました。11 の海水層には区別しやすいように、温度・濃度ごとに違う色がつけてあるため、水槽は虹のようにも見えました。

10分の1模型での社内テスト

社内テストの様子

11層に分かれた水槽

11の海水槽

海水層がまじりあうことなく、常に 11 層を保持しているためには、水槽の片側からもう一方の片側へ、各層ごとの流れを止めてはなりません。水槽内に 11 層の流れが存在し、しかも混じり合わないようにし、さらに層ごとに決められた温度・濃度を保ったまま循環しなければならない・・・この厳しい条件をポンプを制御することで成功したのです!

同時に、水槽内の魚の動きを CCD カメラで追い、その位置を数値に変換してのデータ検証も行いました。しかし、魚がどんな動きをしても、また動かなくても魚だと認識できるようにするためには専用のソフトを組まなければならず、そこには想像以上の苦労が待っていたわけですが・・・気になるこの続きは次号のお楽しみということで。

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