前回は、代表取締役山田社長と、YTSのものづくりを支える【開発】【生産】【営業】の3本柱のうち、技術の要である常務取締役技術部長 村田茂様にお話を伺いました。今回ご登場いただくのは生産の要、取締役生産部長兼営業次長 寺井力(てらいつとむ)様です。

詳しいことは本文で紹介しますが、YTSは製品在庫を一切持ちません。それでいて短納期もお手の物。最速でなんと! “当日注文・当日発送”という超スピード納期を可能にしているのです。この驚くべき対応力の秘訣は何か? どのような生産体制を持たれているのか? メルマガ編集部こと「イワ気になる隊」も興味津々で寺井様にお話を伺いました。

── それではYTSの生産体制から教えていただけますか?

寺井「現在YTSは千葉県内の佐倉工場と四街道工場の、2箇所で生産を行なっています。佐倉工場には樹脂の射出成形機が11台、機械加工機が7台あり、ポンプの組み立てと検査を行っています。四街道には機械加工機が7台と、PTFE(テフロン/フッ素樹脂)ダイヤフラムポンプの製造部門があります」

── えっ?! 成形機が11台もあるんですか?!(驚)

佐倉工場 

寺井「はい。小さいもので15トン、最大で1300トンの成形機があります。1300トンの成形機を買ったのは、もう30年以上前になりますが、千葉県ではたぶんうちが最初だと思います。正式に調べたわけではありませんが、今もこのクラスの大型成形機を持っている会社はほとんどないと思います」

── その大型の成形機は、あれですよね? 先代社長が一念発起して買ったという・・・

寺井「あ、聞きました? そうです。大きすぎて工場にちゃんと入らなかった例の機械です(笑) でも、それを買ったおかげで、50ミリ以上の大きなポンプが作れるようになりました」

寺井「村田も言っていたと思いますが、成形機はほぼカスタマイズした “YTS仕様”を購入しています。標準品をそのまま買うことはまずありません。特にテフロン(フッ素樹脂)のダイヤフラムポンプを製造している会社は国内でも数少ないと思うのですが、その設備は全部お手製です。先代の社長が、窯からブロー成形することから、自動機まで全て一から考えて作りました。たとえば、釜の中の高温で、尚かつ温度が均一になるようにとか、後ろからファンを当てるとか、細かなところまで考えていましたね」

──  それはもう発明家の域に達していますね。相当研究される方だとは伺っておりましたが、そこまで極めるとは!(驚)

寺井「そうですね。確か大学は文系だったと聞いていますが、探究心はとてつもなかったですね。相当勉強されていました。技術の村田も手伝っていましたが、あ、知ってました? 村田は中学生の頃からここで手伝いをしていて、自動機の釜を設計していたんですよ」

── えっ?! そうなんですか?? それは初耳です。中学生からものづくり魂」を先代から叩き込まれてきているんですね。

飛び出すお話に驚きがいっぱいなYTSさんですが、それだけ仕事が面白く、働きやすい会社である証明なのでしょう。

寺井「そこまでやるのは、過去に起こした大きな失敗があったからです。事故は私がまだ子供だった頃に起こったのですが、2度と同じ過ちを繰り返さないためには、すべて手作りで、ということです」

山田社長も技術の村田さんも、この件については語ってくれました。成形機を買う前ですから、とうに30年以上は過ぎている以前の話ですが、隠すことなく、風化させることもなく、しっかりと語り継ぎ、「生きた教訓」して全社員の心に染み渡っているのですね。ちょっと変な言い方になりますが「素晴らしい失敗の生かし方」をされているのだと、つくづく思いました。

── では、各工場の特長や役割分担などがあれば、教えてください。

寺井「もともとは東京の大田区に本社工場があったのですが、そこが手狭になったので、1996年に千葉の四街道に移転しました。今も四街道が本社工場です。佐倉工場は2006年に稼働をはじめ、主に量産品の製造(成形→加工→組立→検査→出荷)を行なっています。

四街道工場はPTFEの加工と特注品の加工を主にやっています」

特注品でもスピード納品

寺井「特注品に関しては、自社で作れないというメーカーが多いですよね。協力会社さんにお願いして作ってもらうとなると、早くて1ヶ月、一般的には2〜3ヶ月くらいのリードタイムが必要になります。でも、YTSはご存知の通り樹脂パーツ100%が自社製造です。設計部門に『これ作って』と言えば、1ヶ月以内に特注品の部品を一から自作し、組み立てることができるんです。他のメーカーさんに比べたら、特注品が製品になるリードタイムはとても短いと思います」

── 外の力を借りずに、すべて自社内で完結するんですから、これはもう鬼に金棒というか、歌って踊れるというかとにかく強力ですね。

寺井「技術と生産がいつも一緒に動くので、出来上がってから『あ、ダメだったね』というのがないんです。機械加工にしても、作っている途中で『これ、ムリじゃない?』ということがわかると、その場で技術を呼んで解決策を練ります。プログラムを変えたり、設計図を引き直したりして、リアルにすぐに手を動かします。ですから不具合の発見も早いし、不具合の数も減る。というか、不具合になる前に修正しちゃうというほうが正しいかもしれませんね」

── なるほど! 部門間に壁がなく「風通しの良い会社」だからこそ、できることですよね。技術と生産が、ツーと言えばカー、打てば響く関係性で取り組んでいるからこそ、何事もサクサクと進むんですね

量産品はもっと凄かった! なんと当日受注・当日発送!

寺井「国内の発送(イワキさんからのご注文ですね)は、午前中までにご注文いただければ、その日のうちに組み立てて夕方発送。早ければ翌日お届け、という体制になっています」

── ええっ?! 当日注文、当日発送? それはもうアマ○ンを超えているのでは?!

寺井「もちろん台数や大きさなどケースバイケースではありますが、これを可能にしている組み立て部門の柔軟さがひとつ。当日対応が可能なように1日の予定を立てています。そしてもうひとつは、素早く、正確な指示を業務が出せるようなシステムを持っているということです」

素早く的確な指示を出すためには、社内の情報整理と情報共有が必要不可欠。YTSでは10数年前からトヨタ生産方式の「カイゼン」を導入し、業務の効率化を実践しています。それ以前は製品在庫を持っていたし、残業も多かったといいます。

寺井「在庫数が決まっているので、その数を埋めるためだけに、生産部門は残業してポンプを組み立てていたんです。注文も入っていないのに、ですよ」

『売れもしないポンプを残業してまで作るのはイヤだ』という現場の声を聞いて、カイゼンに乗り出したYTS。ここにも持ち前の探究心と考える力が遺憾無く発揮されました。

寺井「嫌なのはわかった。じゃあ、どうしたらいい? 正確な指示を出すには、システムが必要だよね。どんなデータが必要? どうすればそれができる?・・・と、具体的に考えていきました。そうしたら、必要なデータを作れる人間が社内にいたんです」

── えっ?!(驚) 社内に?!

寺井「ええ。私の隣の席にいます(笑)」

YTSは基幹となる生産システムを導入されていますが、これをカスタマイズするとなると、とんでもない費用がかってしまいます。しかし求めれば与えられるとはまさにこのこと。一般的なデータベースソフトを使って、生産システムのデータを「YTS仕様」にカスタマイズしてくれる逸材が社内にいたのです。

寺井「最初は組み立て部門での入社だったのですが、そのうちパソコンオタクだということがわかり、『こんなのできる?』と聞くと『できます』というのでお願いして、今に至るという感じです。今では原価、営業資料、出荷データなど、必要なデータがボタンを押すだけで見られるようになったので、各所の処理能力が飛躍的に上がりました。だから当日対応も可能になったんです」

── 素晴らしい! その方にMVP賞を差し上げたいです!!

とはいえ、その人も最初からデータベースの達人だったわけではありません。彼の机には「○○初級」から分厚いマニュアルがずらりと並んでいたといいます。あくなき探究心と研究魂で、唯一無二の「YTS仕様データベース」を作り上げたのです。成形機をまるごと手作りした先代社長の姿と重なるのは気になる隊だけではないはずです。

寺井「まぁ、うちは人数も少ないので、一人でなんでもやるというところもあります。私も業務を見て品質管理もやって、生産全体を見て、なおかつ今年から営業部も見るようになりましから」

YTSを支える「技術」「生産」「営業」の3本柱。「考えて」「作って」「売って」を別々に考えるのではなく、すべてをつながりとしてとらえ、本質を理解することで、全員が同じ方向を向くことができる。

寺井「たとえば私も村田も生産のプロではないので、機械を触れるかと言ったら操作はできません。ですが理屈というか、そもそもの本質がわかっているので、同じ目線でプロと話ができるし、『どうすればできるか?』の案を根本から練ることができるんです」

「まぁ、うちくらいの規模だからできるんでしょうね。おかげさまで、風通しだけは良い会社です(笑)」

─ ありがとうございました! 知れば知るほど魅力あふれるYTSのファンになってしまったイワ気になる隊でした。

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