次にご登場いただくのは、YTSの技術の要、常務取締役技術部長 村田茂(むらたしげる)様です。 村田さんは自他共に認める「営業よりもよくしゃべる技術者」(笑)。その楽しくも軽やかな話術に、メルマガ編集部こと「イワ気になる隊」は、思わず「師匠〜」とお呼びしたくなりました。

それでは、村田さんによる「ダイヤフラムポンプ・簡単レクチャー」からスタートです。

── では、製品ラインアップやマーケットなどを教えていただけますか?

村田「私たちが作っているのは『ダイヤフラムポンプ』です。でも、ほとんどの人は『ダイヤフラムって何?』って感じですよね。そこで私はいつも『ダイヤフラムは人の横隔膜』、ポンプがやっていることは『ストローで液体を吸って、吐き出すを繰り返しているんだよ、と説明しています』

村田「人は水やジュース、炭酸飲料、ちょっと粘度のあるシェイク類も吸えますよね。あと、タピオカドリンクなど固形物が混ざっていても大丈夫だし、粉薬なんかも飲めますね。ダイヤフラムポンプもそれとまったく同じで、ドロドロOK、サラサラOK、粉もOK、混ざっていても大丈夫!という便利なポンプなんです」

── なるほど! ものすごくよくわかります!

村田「次に、ダイヤフラムポンプって、機械的にどうやって動いてるの?という話ですが、これも簡単。はい、口とストローの代わりに注射器を持って『吸って出す』を交互に繰り返してくださーい(笑)。YTSのダイヤフラムポンプは『ダブル・ダイヤフラム』。一度にいっぱい水を吸ったり出したりしたいので、注射器2本付けちゃったんです」

村田「続いてポンプの種類です。さきほどのストローの太さが違うと思ってください。一番小さいポンプのストローの直径が5ミリ、大きいのだと8センチあります。8センチのストローって相当ですよね(笑)。すっごい肺活量が必要になりますが、それほどパワーがあるポンプだということです」

「今度は材質、何でできているの?という話をします。ストローの素材は大きく分けると金属と樹脂の2種類。もっと細かく分けると5種類あります。横隔膜の材質は7種類。他にネジとかバルブとかいろんなパーツでポンプはできているんですが、それらの材質を全部ひっくるめると、1000種類以上あります」

── え? 1000種類?! やっとリアクションできました(笑) あまりにリズミカルに説明されるので、笑いで反応するしかできませんでしたが、それにしてもすごいで数ですね。

村田「ネジ一本とってみても、国内はJIS規格、EU圏ではEU指令というように、世界にはいろんな規格があります。今はエコで安全な製品でないと買っていただけないので、お客様のご要望にお応えしているうちに、自然と増えちゃったって感じです」

1000種類以上のパーツを100%自社製造!

前回の山田社長のお話にもあったように、YTSは自社で樹脂成形機を持ち、大きなパーツからネジ1本に至るまで、樹脂製部品のすべてを自社工場で製造しています。100%YTS、100%メイド・イン・ジャパンです。

村田「多分そんなことする会社は、他にはないと思います。こんなにたくさんの成形機を持っているメーカーも多分いないでしょう。普通なら機械を買わないで、専門の業者に外注しますよね。でも、うちは買う方を選ぶんです。全部自分たちでやらないと気が済まないという、妙な会社ですよね」

もちろんそれには過去の大きな事故という苦い経験があってこそ。それを学びに品質の要となる部分を自分たちでコントロールしなくては、真の品質管理などできないと考えているのです。

村田「なんでそんなに買うの? と言われたら『必要だからです』と答えるしかないのですが、成形機もただ標準仕様のものを買うのではなく、相当カスタマイズしています。機械メーカーさんにとっては特注中の特注で、ご苦労をかけていると思いますが、いつも私たちのリクエストに応えてくれています。感謝しかありません」

イワキとYTSがベストパートナーであるように、YTSとこの機械メーカーさんも素晴らしいパートナーシップです。すべてはお客様のご要望に応えたい。良い製品を作りたい。その強い思いがあるから、こんなにもたくさんの「特別仕様」が実現できたのでしょう。

村田「えっと、あと質問は何でしたっけ? あ、マーケットですね。国内はイワキさんが100%販売してくださっているので、イワキさんがお得意の半導体、化学産業がメインです。ドロドロ泥水から塩酸・硫酸まで、幅広く移送できるラインアップを取り揃えております」

── ありがとうございます。お見ごとです! 一瞬でダイヤフラムポンプのファンになりました。村田さんの足元にも及びませんが、イワキブログの「ポンプなるほど用語編」でも「ダイヤフラム」について解説しております(リンク)。合わせて読んでいただけるとうれしいです。

── YTSのダイヤフラムポンプといえば「エアー駆動」ですが、なぜエアー駆動に特化したのか? 開発の経緯を聞かせてください。

村田「エアー駆動のダイヤフラムポンプは圧縮空気だけで動きます。もともと空気圧を計る圧力計などをつくっていたので、空気を制御する技術は昔から持っていました。空気だけで動くポンプは、非常に大きな市場があるのでは? ということで先代の社長と一緒に開発を始めました」

電気を使わないので火花が散ることがない。火気厳禁の現場やガソリンなど引火性の薬液の移送で使っても爆発する危険性もない。水中でも使える。汎用性も高い。そこがエアーの最大の魅力です。だからエアー駆動にとことんこだわって開発を続けています。

── それでは、設計面におけるYTSの強みを聞かせてください

村田「ひとつは経験があること。もうひとつは『やってみたい』ができる会社だというところでしょうか。」

YTSの社風として「最新のツールも怖がらず進んで導入する」という面があります。最たるものは先代社長の成形機の購入でしょう(前回参照)。新しいツールでも臆さず導入し、実際に試してみる。とっても好奇心旺盛なのです。

村田「このインタビューを受けるので、良い機会だと思って調べてみたのですが、1982年に2DのCADを導入し、1992年には3DのCADを導入しました。強度解析をしたかったんです」

もちろんどちらも「はしり」と言われた時代です。高価なことはもちろんでしょうが、ツールを使いこなすためには、相当な勉強も必要だったことでしょう。

村田「CADを使う前はドラフターを使って、手で書いていたのですが、精度をよくするため設計図を大きく書いてもせいぜい10倍程度です。でもさすがはコンピューター。画面上で1000倍まで拡大できますからね。しかも3Dになったらそれが360度、ぐるぐる回転して確認ができます。おかげで内部のスペース不足がすぐに発見できたり、構造の矛盾などが瞬時にわかるので改善もしやすく、開発期間が短くなりました」

── 『やってみたい』」ができる会社って、とっても素敵ですね。

村田「そうですね。失敗しても誰も責めないし、むしろ失敗させてくれるというか。たとえ装置が壊れたとしても『やっぱ壊れたかー(笑)』という感じです。でも、必ず失敗した原因を追求し、なぜ失敗したかを見つけ出します。ですから今までいっぱい失敗して、いっぱい助けてもらいました」

村田さんが「やってみたい」と手をあげて実現したことのひとつにISOの取得がありました。取得したのは1997年。50人規模の会社としては相当早かったと思います。

村田「当時、技術部門は3人しかいなかったので、『あれやっといて』ですむ状況だったんです。実際、コンサルティングの先生も「技術はいいんじゃないですか?」なんて言っていたし(笑) でも、世界基準というものを知りたかったし、設計品質をもっと上げたかったんです」

ご存知の通りISOをクリアするには、ものすごい量の書類を作成し、報告・確認業務も徹底しなければなりません。

村田「大変でしたけど、それ以上にチャレンジ精神が勝ったというところでしょうか。今振り返るとあの時やっておいて本当によかったと思っています」

── そのチャレンジ精神は、技術力の向上にも大いに役だっていそうですね。

村田「確かに・・・。でも、私たちの技術を確実に磨いてくれているのは、お客様とイワキさんです。お客様の声に耳を傾けることはとっても大切だとわかってはおりますが、話を聞いているうちに、技術の方はどんどん『うむむ・・・』と頭が傾いてしまう場面もあります。できる、できない。できなくはないけど、ここまでだったら・・・といったせめぎ合いですね」

確かにお客様の要望に100%に応えるのは難しい事もあります。でも「ここまでだったら」「これだったら」と、村田さんは必ず「今できること」をハッキリお伝えしています。その真摯な態度にイワキはもちろん、お客様も協力して「できるところまでやってみよう」とGOサインが出る。理解があるからこそ、成果を出したい。思いに応えたい。そんな信頼関係の中で技術は磨かれているんですね。

村田「これからもより一層、イワキさんと一緒に技術に磨きをかけてまいります。まだ詳細は言えませんが、新しい技術を搭載した新製品も考案中です。楽しみにしていてください」

── そのお披露目の際にはぜひ、イワ気になる隊に取材させてください。楽しいお話、ありがとうございました!

 

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