残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマをお伝えしてきましたが、「第54話」からは、昨年(2019年)他界したイワキ創業者である藤中義昭の人生を振り返っております。

>>> (第58話)【創業者編】藤中義昭が「理化学機器」の営業職時代に得た“財産”

老舗の理化学機器間屋でセールスマンとなる

前回は、ガラスメーカーの工場長を務めていた義昭が退社を決めるまでをお話しました。ひとりで世の中に出てからずっと独立することを考えてきたわけですが、ガラス製造技術を身につけ、工場の運営にたずさわってきたものの、ガラス製造は自分の目指す事業ではないことを日々感じていたのも事実です。そんな義昭が次に選んだのは、営業の仕事でした。カバーグラスを扱う関係で、少し馴染みになった理化学機器を扱うのがいいだろうと、元いたガラスメーカーの社長のすすめもあって、神田にある商社に入社を決めたのです。

その会社は、医理学ガラス器具や教材を扱う卸業者でした。神田には理化学機器問屋がいくつかありましたが、そのなかでも老舗で繁盛しているお店でした。卸の他に理化学機器の最終ユーザーヘの直販をはじめたばかりでしたので、義昭はその「ユーザー直販」の担当になりました。理化学機器というものは、一見しただけでは何に使うのか見当がつかないものが多く、はじめのうちはそれぞれの商品の機能や特性を覚えるのに必死でしたが、「知恵を絞った営業」をこころがけました。

エンドユーザーヘの営業は初めてのこと。手本も教えてくれる人もいない中でのスタートでした。たくさん買ってくれそうな大会社へ売り込みをしてみましたが、玄関払いであえなく沈没することもしばしば。困り果てた義昭は、自分なりに“作戦”を考えました。とにかくすべて誠心誠意をもってあたること、そして誠意を理解してもらうまで何度でも訪問して粘ること。もちろん、営業回りにも工夫をしました。

まず、株式欄で株価の高いメーカーをマークし、その中から、神田・日本橋・京橋周辺に本社のある企業を選びだし、順路を決めて自分のセールスマップを作りました。そして早速翌日から、セールスマップの順路で営業を開始し、毎日決まった順路を歩いて訪問しました。効率よく回るので、担当者と顔を合わせる機会も増えてくると、先方もだんだん口をきいてくれるようになるものです。それがぼつぼつ注文につながっていきました。目標をしぼった「限定作戦」が成功したのでしょう。

研究所に出入りし、化学装置の知識を得る

理化学機器の場合、発注は本社で納品は現場にということが多いものです。現場はだいたい都心から少し離れた場所にあります。そこで、途中の道筋にある新しい会社や大学、官庁筋の研究所を訪れることにしました。訪間先が増えるにつれて営業成績は伸び、扱う商品もガラス器具から機器類に広がっていきました。

現場に出入りして何よりありがたいと思ったのは、設備や機器類が目の前にあることでした。どこの研究所でも、質問するとたいていのことは熱心に教えてくれました。文献やカタログも集まりますし、現場で会ったメーカーの人から作る側の情報も入ります。これらすべてが、後に貴重な財産となっていったことは言うまでもありません。

財産というのは情報や知識だけではない

義昭にしてみれば、分からないことをどんどん質問するのは当然のことでした。一方、研究所員たちは「営業マンにしては技術に興味があり、いろいろ質問してくる珍しい人だ」と思っていたようでした。ただ質問するだけでなく、自分でいろいろと調べて勉強もしましたし、そもそもただの御用聞きのつもりはありませんでした。そこで行われている研究の内容を理解し、できるだけ的確に、お客様の必要としている情報や製品を提供しようという態度が知らず知らずに認められ、信頼を受けるようになっていったのでした。

最初に「ケミカルポンプ」を扱ったのも、その頃のことでした。いや「ケミカルポンプ」という言葉はまだ使われていませんでしたが、硫酸を送るための小型ポンプとして、鉄よりはいささか耐食性の優る『ハードレッド(hard lead=硬鉛)』のポンプを仕入れたのです。

樹脂を使ったケミカルポンプと初対面を果たしたのは、それから少し経ったころでした。金属メーカーの研究所で、トリウムの精製装置で溶媒抽出用として「ベローズポンプ」が作動していたのです。それはポリエチレンの折りたたみ水筒を使って作られた樹脂のケミカルポンプで、とある製作所がお客様の要望に応えて作った優れたものだったのですが・・・この続きはまた次回にいたしましょう。

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