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ポンプに賭けた男たち
残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマをお伝えしてまいりましたが、第60話までの創業者編に続き、第61話からは【レイシー編】として、水生生物や研究分野におけるイワキのブランド「レイシー」の歴史を紐解いております。
前回はイワキの“戦法”を受け継いだ株式会社レイシーの営業戦略に触れました。1965(昭和40)年8月、当時イワキが分室として使用していた木造ビルの一角に、たった4名で立ち上げた会社でしたが、レイシー設立から3年をかけて基礎を築いた山田はイワキに戻り、レイシーの営業は後任者へと引き継がれていきました。
1986(昭和61)年からレイシー営業の責を担ったのは、1966(昭和41)年入社の吉田でした。レイシーはその後も取り扱い製品を増やし、そのユニークな発想と製品開発が注目され、なかには「観賞魚器具を選ぶならレイシーだ」と言う人も現れるほどになりました。
ろ過ユニットのポンプに関しては、イワキで開発した製品をレイシー向けに改良するといったやり方で、VLPを「レイシーポンプP型」として数種類のシリーズ化を行いました。このP型ポンプやマグネットポンプは、観賞魚の飼育用だけでなく、活魚の生け簀(いけす)用としても使われ始めたのです。
生きのよさが売り物の活魚は、仕入れから販売までの回転が早く、その間も徹底した水質管理を求められます。また、観賞魚と違い、過酷な設置条件や荒っぽい取扱いにも耐えなければなりません。そうした背景から、高性能・高品質のレイシーポンプは、活魚業界にも広く使われ始めたというわけです。
この頃から、レイシー独自の装置も考案していきました。池のろ過と夜間の照明を兼ね備えたウォータークリーナーや、樹脂製の洋風角型池トレビ、当時の水槽用ろ過ユニットとして最新だったダックなど、新製品として続々と世に出していきました。
そしてクーラーやサーモスタット、殺菌灯などの製品ラインナップも揃っていく中、「水槽用ろ過ユニット」は、他社を寄せつけない性能のよさを誇っていました。
さらに時代の追い風もありました。日本人のグルメ志向が進み、バブル景気の影響もあってそれがピ―クに達した1980年代後半から1990年代頃には、活魚を店内の水槽で泳がせる割烹店などが増え、店内水槽用としてレイシーの上部式ろ過ユニットの売上も伸びに伸びたのです。
また、水槽の水温を下げるクーラーも好評で、一時は注文に応じられないほどでありました。ありがたいことに、他に類似品はあっても「品質や性能に間違いないのがレイシーだ」という評価をいただき、このことは業界ですっかり認知されたようでした。
その評判のおかげで、レイシーに販売してもらおうと、他社から持ち込まれる製品もありました。
1994年には、カルキ抜きをせず水道水でそのまま溶いても、天然と変わらぬ海水が作れるという画期的な製品、人工海水「ロートマリン」を発売しました。
そもそも海水は、ただ塩分を含んだ水ではありません。ありとあらゆる物質が溶け込んだ“生命の源”で、よく海水は人間の体液にとても近いと言われています。この製品は、目薬を専門にするロート製薬が特別プロジェクトを組み、3年がかりで開発した製品で、ロート製薬からレイシーに販売を委託されたのは、まさに身に余る光栄でした。
会社設立から約30年、いつの間にかレイシーは、一流企業とビジネスができるまでに成長したわけですが・・・この続きはまた次回にいたしましょう。
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