このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指しています。文末の「今日の一句」にもご注目ください。クスッと笑えて記憶に刻まれるよう、毎回魂を注いで作っております。

今回の用語は>>>>> 残留塩素計(ざんりゅうえんそけい)

【残留塩素計】
水の分析において、残留塩素の濃度を測定する装置。「残塩計」とも呼ばれる。残留塩素計は、水道水など塩素消毒された水中に残留する有効塩素成分の連続測定を目的に用いられる。一般的な電気化学式残留塩素計は、「有試薬型」と「無試薬型」に大別される。

私たちに安心・安全な水を届けるために、日夜いろんな菌と戦い続ける残留塩素。地味ながらも頼りになる存在であることは、これまで説明してきた通りです。

さて、今回注目するのは、その残留塩素を測る装置です。その名も「残留塩素計」! 清々しいほどの直球のネーミングですね。

しかし、一口で「残留塩素計」と言ってもいくつか種類があり、それぞれ測定方法も違えば、活躍する場面も違ってきます。人も装置も適材適所。どんなに優秀な装置でも、ひとたび設置場所を間違えば、宝の持ち腐れになってしまいます。

逆に言うと、その装置ごとの得意分野を理解しさえすれば、お互いがごきげんに、しかも最高のパフォーマンスが発揮できる関係を作り上げることができるのです。

ということで、今回は、「残留塩素計の世界」をざざっとご案内したいと思います。全体像がわかれば、それだけ残留塩素に関する理解もぐぐっと深まるはずです。

残留塩素計の分類

まずは、測定するために薬を使う「有試薬型」と、薬を使わない「無試薬型」に分けられます。

有試薬型は、浄水場のすべてのプロセス管理、工場・工業用水設備の管理(冷却水や飲料水)、大型ボイラの水質管理に適しています。また試薬により遊離残留塩素と全残留塩素を分離して測定することが可能です。

一方、無試薬型は、浄水場、配水場などの上水設備の水質管理のほか、プール・温浴施設の水質管理、食品工場、井水処理などで使用されています。「ガルバニ電池式」と「ポーラログラフ式」に分けられますが、現在の主流は「ポーラログラフ式」です。さらに、ポーラログラフ式も、2極式3極式があります。

残留塩素計の分類

残留塩素計の分類

「ポーラログラフ」や「ガルバニ電池」など、初めて発音する言葉がたくさん出ていますが、今の時点では「へぇ〜、いろいろあるんだねぇ〜」と、ひとまずさらっと受けとめていただければ結構です。その意味や用途については、おいおい説明してまいります。ゆっくり理解していきましょう。

残留塩素計を使わない方法もある

突然ですが、プールの時間に、なにやら薬を入れてプールの水を測っていた先生の姿を思い出せる方はいらっしゃいますか? もしかしたら昭和限定の光景で、若い方はまったくわからないかもしれませんが(すいませんね、昭和で)、実はあれこそが、装置を使わずに残留塩素を測っていた「現場」だったのです。

残留塩素計を使わずに測定する方法を「手分析」といい、検査する水に試薬を入れて、化学反応による色の変化によって残留塩素濃度を測定するため、「比色測定法」とも呼んでいます。手分析には次のような種類があります。

手分析の種類

DPD(でぃーぴーでぃー)法(定量範囲 0.05~2mg/L 低い濃度で使用される。)
DPDは「ジエチルパラフェニレンジアミン」の略。舌を噛みそうで言える気がしませんが、近年多くの水道事業体をはじめ、プール、温浴、排水処理等、様々な塩素処理の現場で採用されている測定方法です。

DPD試薬は塩素と反応すると、桃色〜桃赤色に発色します。濃度が高ければピンク色が濃くなります。その性質を利用して、色見本と見比べて、現在の残留塩素量を測っていくわけです。目視による測定ですので、厳密測定結果が必要なシーンには不向きですが、試薬さえあれば手軽にできるため、プールや温泉などで広く利用されています。ちなみに、発色の濃さを光の透過度で読み取る、吸光光度法で測定するデジタル式の測定器もあります。

また結合塩素が含まれる水質で、遊離塩素用試薬を用いた場合、誤発色する場合があので、温泉水などでの使用に関しては、次に説明する「シリンガルダジン法」などを用いる場合もあります。

シリンガルダン法(定量範囲 0.1~10mg/L 低い濃度で使用される。)

シリンガルダジン法は、鉄、マンガン、亜硝酸イオンの影響が極めて少なく、モノクロラミン、ジクロラミンとの反応性が低いという特徴があります。また、測定範囲は遊離残留塩素として0.1~10mg/Lと幅広く利用可能。簡易水質検査試験紙(残留塩素測定試験紙)に用いられている測定法です。

ヨウ素滴定法(定量範囲 0.1mg/L以上 高い濃度で使用される。)

残留塩素とヨウ化カリウムが反応し遊離するヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し残留塩素を測定します。終点の決定にはデンプンを用い、ヨウ素デンプン反応により着色、または脱色を利用します。

電流滴定法

検水中の酸化物質を還元性試薬によって中和しその終点を電気的に読み取る方法です。遊離残留塩素の測定に優れています。遊離残留塩素と結合残留塩素の明確な分離測定ができ信頼性が高いとされていますが、実験室や研究室での使用が主流であり、現場での使用には普及していません。

残留塩素計にもいろいろあるなぁ〜と思えたところで、次回は残留塩素計の大事なポイントである「ポーラログラフ」の説明に入ります。ポーラログラフを制するもの、残留塩素計を制すといっても過言ではないと思いますので、どうぞお楽しみに。

今日の一句

人も装置も適材適所
測り方にもいろいろあるぞ
残留塩素 奥深し

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