ポンプなるほど
ポンプにまつわる、さまざまな「専門用語」にスポットを当て、楽しく軽やかに解説しているこのコーナー。業界の方にはもちろんのこと、専門知識ゼロでもわかる、クスッと笑える楽しい用語解説に力を注いでおります。
食品、飲料、医薬品、化粧品の製造現場では、衛生管理の徹底が不可欠であり、わずかな汚染も許されません。こうした背景の中で、生産設備の洗浄・消毒を自動化するのが、CIPです。 簡単に説明すると、設置されているその場で、分解せずにタンクや配管内部を自動洗浄する方法のことです。
わざわざ洗浄時にポンプやバルブ等をバラさなくてもよく、時間と手間を大幅に省けます。 本記事では、CIPの基本的な概念やメリットについて解説します。食品や医薬品などの高い衛生レベルが求められる分野で導入が進んでいますが、ここでは食品工場のケースに焦点を当ててお伝えします。
食品工場ではHACCPに沿った衛生管理に取り組む必要があるため、生産設備の洗浄はとても大事な工程です。 方法として、大きく分けて2つのやり方があります。
一つ目は「CIP（Cleaning In Place：定置洗浄）」と呼ばれる方法です。 設備内で原材料と接触する様々な箇所を、分解したり動かしたりせずに、普段使っている状態のまま洗うのが特徴です。主に大きなタンクや、配管の中を洗うのための洗浄方法です。
配管の中に洗剤を勢いよく流し込み、洗剤の力と、洗剤が壁にぶつかる力で汚れを落とします。洗浄効果を最大化するために、洗剤の温度管理や洗浄時間も重要な要素になります。
CIPを補う形で、「COP（Cleaning Out Place：分解洗浄）」という方法もあります。これは、ポンプやバルブなどをいったんバラバラにして洗うやり方です。手作業でブラシ洗いしたり、高圧の水流を吹き付けたり、超音波の振動で汚れを剥離させたりすることで、汚れを落とします。
特に汚れがひどい場合は、洗剤に部品を丸ごと漬け込んで、汚れを柔らかくしてから洗浄する場合もあります。
効率的な洗浄を行うために、設備の規模や洗浄頻度、製品の種類などによって、適したCIPを選ぶ必要があります。
洗剤を毎回使い捨てにするタイプ（シングルユース）は、調整された洗剤液を一回だけ使用して、洗浄の際には毎回入れ替えをします。洗浄液管理の簡素化ができ、設備コストの低減に優れています。
一方、洗剤を回収して再利用するタイプ（マルチユース集中型）では、洗浄液を複数回使用するため、洗浄液の消費量を抑えることができ、環境負荷を低減できます。
食品工場で広く採用されているCIP。そのメリットは・・・
CIPは配管内を洗浄液が自動で循環する仕組みのため、装置の分解作業が不要です。洗浄時に工具を使う必要がなく、作業効率と安全性が同時に向上します。
洗浄プロセスがスピーディかつ計画的に実行できるため、生産ラインの停止時間を最小限に抑えられます。結果として生産ラインの稼働率が上がります。
自動化されたCIPはマニュアル操作に頼らず、毎回同じ条件で洗浄されます。これにより、現場の熟練度に左右されず、品質が均一に保たれます。
人の手が入らないため、外気や異物との接触を防ぎやすくなります。また、洗浄履歴の記録も可能なため、トレーサビリティの確保にも役立ちます。
食品の製造現場において、製品の品質と安全性を確保するために最も重要な要素の一つが「清潔さ」です。この「清潔さ」を専門用語で「サニタリー性」と呼びます。単にきれいにするだけでなく、微生物の繁殖を防ぎ、異物混入のリスクを最小限に抑える設計・運用が求められます。
サニタリー性とは、ひと言で言えば「衛生的な設計と構造」のこと。食品や医薬品が触れる機器の表面は、錆びにくく、洗浄しやすい材質（例：ステンレス鋼）であることはもちろん、継ぎ目やデッドスペースを極力なくし、汚れが溜まりにくい滑らかな構造が求められます。なぜなら、わずかな隙間や粗い表面でも、そこに製品残渣が残り、微生物の温床となり得るからです。
食品や医薬品の製造現場におけるサニタリー性の追求は、製品の安全と品質を担保する上で避けては通れない道です。そして、そのサニタリー性を効率的かつ確実に実現するCIPシステムにおいて、サニタリー性の高いポンプの役割は、まさに縁の下の力持ちと言えるでしょう。
イワキのポンプではサニタリーロータリーポンプ（WRU-U2）があります。液だまりの少ない構造で、洗浄性とメンテナンス性を徹底的に追求しました。もちろんCIP洗浄にも対応（オプション）します。
私たちの口に入る食品や、健康を支える医薬品の「清潔」を守るCIP。イワキのポンプもそれらを支える重要な役割を担っています。
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