前回は、「イワキアクアティック」について製品戦略部の川島さんにお伺いしました。「気になる」ことがあれば突撃取材を惜しまないメルマガ編集部こと「イワ気になる隊」ですが、川島さんのお話を聞けば聞くほど、「イワキアクアティック」や「レイシー」についてもっと知りたくなってしまいました。

「イワキアクアティック」が事業として立ち上がったのは2016(平成28)年のこと。元々は日本でレイシーとして手掛けていた水生生物を用いた研究用途向けの【小型魚類集合水槽システム(LAbREED)】を研究・分析の分野向けに特化してグローバル展開するため、イワキアメリカと一緒にプロジェクトチームを発足したというお話を伺いました。川島さんからは、まだレイシーがイワキとは別会社だった頃のお話まで飛び出したのですが・・・

── 引き続き「レイシー」についてお伺いしたいのですが、 ズバリ! 川島さんが思うレイシーの魅力とは何でしょう?

「いささか古い話になりますが、私が学生の頃、初めてレイシー製品を見た時の印象からお話しましょうか。それは、とある熱帯魚店でした。当時、自宅で金魚や鯉だけではなく熱帯魚を飼う、いわゆるアクアリウムが浸透し始めた頃でしたので、他のメーカーの製品は、どれも熱帯魚水槽を意識したカラフルなパッケージの梱包で、海外製品も多く陳列されていました。

そんな中、ひときわシンプルな梱包箱に入ったポンプがあり、値札を見ると価格も高い「何だこのポンプは?!」と思ったのがレイシー製品を初めて見た時の印象です。 

まだインターネットが普及していなかった時代の話ですから、それから熱帯魚に関連する雑誌や本を見たり、各社機器メーカーのカタログを貰うために店員さんに話し掛けたのですが、アクアリウムの初心者にレイシー製品はまだ早いと言わんばかりに安価で手頃な水槽セットを勧められ、さらには『レイシーのカタログは貴重だからあげることはできない』と言われたことをよく覚えています」

── 川島さんにとって、「レイシー」は最初から高級ブランドだったわけですね。

「ですね。その後、縁あってその会社(レイシー)に入社してしまったわけですから、人生っておもしろいですよね。しかし、入社したからこそ、私が最初に熱帯魚店で感じた疑問『何だこのポンプは?!』を解き明かすことができたわけです。

ひとことで言えば、レイシーの製品は「職人気質」なんです!
価格も決して安くはない。そしてカラフルなカタログや広告を大量にバラ撒いたり、派手な宣伝をするわけでもなく、ただただ“本気”で製品をつくっている・・・私自身もそんな会社の姿勢に惹かれて入社したのかもしれませんね。

そういえば、私がレイシーのロゴが付いた社用車で営業していた頃、通りすがりの男性がトントンと車の窓を叩き『レイシーの方ですか? カタログをいただけませんか?』と言われたことがありました。そのくらい、レイシーのカタログは世に出回っていなかったんですね(笑)」

1996年頃のレイシー総合カタログ

── その本質は、レイシーがイワキとタッグを組んでからも変わらないように見えますが・・・

「はい、その通りです。レイシー製品に限らず、イワキ製品全般に言えることとして、様々な分野で“本気度”が高い。いわゆるその道の“プロ”が選び、長く使ってくださる傾向が強いのは事実です。このような話をすると『敷居が高い製品だ』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、これから趣味で水槽用機器類の購入を検討している方も、初めて業務用として機器購入を検討している方にも、ぜひ“プロ”が選ぶ製品を手に取っていただきたいと思っています。そのためには、私たちは常に、その期待に応え続ける製品とサービスを提供し続けなければならないわけですが・・・」

── 品質を第一とする姿勢は、産業用でも観賞用でも、同じということでしょうか。

「はい。普段、私達が日常生活の中で使っている家電でも、24時間休みなく、フル稼働し続けている機器を目にする機会はなかなかないと思います。水槽のろ過循環用ポンプなどは、飼育する生体の生命維持装置の構成機器の一つとして、基本的に24時間365日運転し続けているところも多く、設置される場所や環境も様々です。

これは製品・機械にとっては非常に過酷な条件となるわけですが、その状況下においても、お客様から『耐久性があり、信頼できる』と言っていただくためには、何年もの間、大きな故障もなく安定した運転をし続ける製品でなければなりません。
たとえ観賞用であっても、魚の命に係わる問題ですから、品質第一は当たり前なんです」

── ちょっと意地悪な質問ですが、レイシーのポンプは“故障”しないんですか?

「いえいえ、どんな製品にも100%はありません。実際に私が経験したエピソードをお話しましょう。ある時お客様から『レイシーのポンプが故障したので修理したい』と連絡があり、そのポンプをお預かりしたところ、私が見たことも聞いたこともないポンプでした。上司に現品を見せたところ『20年以上前まで作られていたポンプ』であることが解り、当時入社して間もない私が知る由もない製品だったのです。   

このお客様には製造から20年以上も経過している旨を説明したところ、『何年使っていたかは覚えていなかったが、そんなに前の物だったら充分に元は取れた』ということで、新しいポンプに買い替えていただきました。これはほんの一例ですが、メーカーである私たちが、『このポンプは10年、20年も故障することなく今まで現役で動き続けていたのか?』と驚かされることが何度もありました。

メーカー側からすれば、数年毎に新しいポンプと買い替えていただきたいというのが本音なのですが(笑)、適切にご使用いただいているお客様ですと、『10年以上は使い続けている』という方が数多くいらっしゃいます。このような耐久性のある製品を長年提供し続けられているのは、レイシー製品が元々、短期間での頻繁な交換が認められにくいイワキの産業用ポンプと同じ基準と管理のもとで造られているからなんです。また、故障が少なく長期間使用できる製品を提供することは、結果的に自然環境を守ることにも繋がるという想いもあり、創立当初から“品質”にこだわりを持ち続けている結果だと思います」  

── そういった意味では、レイシーがイワキと一つになったのも自然な流れだったのかもしれませんね。

「はい。今思えば、それまで別会社として展開していたイワキとレイシーが、それぞれの強みを生かし、さらなる発展を目指していくために、一つの会社になったことがよかったではないかと思っています。ただし、イワキと一緒になったからと言ってレイシー製品が無くなったわけではなく、現在もレイシー製品はイワキの中で、一つのブランドとして日本国内に向けて展開し続け、さらにはイワキアクアティックという新たなブランドをグローバル展開するまでに至っています。これは、レイシー×イワキの相乗効果とも言えるのではないかと思います」

── 本当にそうですよね。もっと言えば、製品のハード面だけでなく、ソフト面までカバーできるのがイワキグループの強みではないでしょうか?

「その通りです。イワキのポンプは様々な分野・用途にご使用いただいており、お客様によっては装置・設備一式をイワキで造って欲しいというリクエストをいただくこともあります。このような場合、イワキでは”システム/エンジニアリング案件”として専任のスタッフが対応しています。 また、その中には液体の移送をするだけではなく、液温の制御や管理、殺菌もしたいというご要望をいただくことも少なくありません。
レイシーでは元々、ある意味で薬液と同じような性質の”海水”でも使用可能な接液部材質にチタンを使用した水温制御・管理や殺菌の機器類をラインアップしていましたので、お客様のリクエストにお応えするために、それらの機器類を活かさない手はありません。

イワキとしてのレイシー事業は、最初こそ手探り状態のスタートとなりましたが、産業界のお客様の中には趣味で熱帯魚水槽を持っていたり、魚釣りや水族館が好きな方も多く、レイシーを紹介すると『知っている』『使っている』という予想外の反響がありました。
ただし、消費財となる水槽用に設計された機器類を生産財となる産業界のあらゆる用途でそのまま使用できるわけではありませんので、お客様の期待に応えていくには良いことばかりではなく、正直、今でも苦労することの方が多いです。
ここに至るまでには協力してくれた各部署のスタッフや関連企業・協力会社をはじめとする皆さまのお力添えがなければ実現できなかったことも多く、改めて感謝しなければなりませんね」

── そういう意味では、イワキの技術センターで行っている“生体を用いた評価・分析”も、製品開発のために大きな役割を担っていますよね?

「そうですね。埼玉県入間郡三芳町にある技術センターは、平成30年に新しく生まれ変わったのですが、そこには小型魚類集合水槽システム LAbREED(ラブリード)にも精通した技術スタッフがいます。装置が10台ほどずらっと並ぶ様は、大袈裟に言えば宇宙開発センターのように見えなくもありません(笑)
そこではゼブラフィッシュやメダカなどを実際に飼育しながらテスト評価や分析などを続けているわけですが、中には研究者専用として一般には市販されていない、いわゆる血統書付きのような高い魚も飼育していたりします。

企業秘密になるのでこれ以上詳しいお話はできないんですが、できる限り研究者の立場に立って、独自の視点で研究開発を続けています。実際にご案内できないのが残念ですが、あとは写真からイメージを膨らませていただければと思います」

── それでは最後に、イワキアクアティック事業の今後の展開や目指すものについて教えてください。

「イワキアクアティックとしては発足してまだ間もないですが、ポンプに限らず、日本ではレイシーとしての永年の歴史、アメリカでは水処理コントローラで培った技術と数多くの実績があります。また、関連スタッフには営業や技術員、水産養殖の専門家や生物学者もいます。イワキアクアティックはこれらのスタッフの技術と経験を活かしたイワキの新たな取り組みとして、今後は日本やアメリカのみならず、世界各国で活躍する研究者のお役に立てる製品とサービスを提供していきたいと考えています」

── 今回はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
 以上、「イワ気になる隊」がお届けしました(^^ゞ

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