このコーナーでは、イワキの技術力が支える様々なジャンルをご紹介しつつ、その製品が使われている分野が意外なほどに広いということをお伝えしてきましたが、今回はイワキのブランドである「REI-SEA(レイシー)」の製品にスポットを当ててみたいと思います。「レイシー」は、ポンプはもちろん、アクアリウムや環境研究分野で活躍する様々な製品をご提供しています。

日本は世界でも有名な水族館大国だということをご存じでしょうか? 「レイシー」は、水族館に欠かせない海水に強いポンプや冷却設備、様々な飼育ノウハウがご提供できるので、全国の水族館では、必ずと言っていいほど「レイシー」の製品が元気に活躍しているんです! ですが、あくまでも“裏方”なので、日頃はみなさまのお目に触れる機会は極めて少ないと思います。そこでこのコーナー初の試みとして、実際に「レイシー」製品が元気に活躍する現場に、イワ気になる隊が突撃しちゃったのであります(*^_^*)

コーナー初の突撃取材敢行!

というわけで、記念すべきコーナー初の取材先に選ばせていただいたのは静岡県沼津市。沼津は世界に誇れる3つの「日本一」がある縁起の良い地です(*^^)v

まずは日本一の山、富士山。沼津はそのお膝元のひとつで、雄大な姿を間近に眺められます。

2つめは日本一深い湾、駿河湾。水深2,500mというとてつもない世界は、まさに未知なる神秘の宝庫。新種とおぼしき生物たちが次々と発見され、世界各国から注目を集めています。

そして3つめが、【沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム】です。深海をテーマにした世界でもユニークな水族館ですが、その個性をさらに際立たせているのが「シーラカンス」の存在。「生きた化石」「幻の魚」と呼ばれるシーラカンスが、なんと5体も展示されているのです。しかもそのうちの2体は、世界でも珍しい冷凍固体。あとの3体も極めて精度の高い剥製となって、完璧な姿を私たちに披露してくれています。5体ものシーラカンスに会えるのは、世界広しといえども沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムだけ!\(^o^)/!なんです。

ここが噂の「沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアム」だ!

そんな唯一無二、日本一の“個性派”水族館を陰ながら支えているのが「レイシー」の製品というわけです。実際にこの目で見て、話を聞いて、ポンプや冷却装置たちの活躍ぶりを、広くお伝えしなくては!と、使命感に燃えたイワ気になる隊は、早速行動開始! 神田須田町の本社を後に、一路沼津へと飛び出したのでありました。

とは言うものの、近年「ダイオウイカ」をはじめ「メンダコ」「チンアナゴ」「ダイオウグソクムシ」などの深海生物がちょっとしたブームになっていて、同水族館の館長を務める石垣幸二氏は、マスコミにも頻繁に登場する超人気者。インタビューのアポイントを取るだけでも至難の業と思われたのですが・・・そこは長年の営業活動を通して、同館と太いパイプを持つイワキ国内営業本部課長の外山が、石垣氏のみならず、館内の設備全般を取り仕切る飼育長の塩崎洋隆氏のお時間までも押さえてくれました!! こんなチャンスはめったにありませんから、実際にその場に足を運ばなければわからないような、LIVE感溢れる「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」レポートを、ハリキッてお届けしたいと思います♪

イワ気になる隊、いきなり深海魚のお出迎えをうける

「おはようございます。今日はよろしくお願いします!」そう口々に挨拶しながら、オープンの午前10時少し前に、「レイシー」製品が活躍しているのが見える裏の通用口から入れていただいた(←なんだかプロっぽい!)私たちイワ気になる隊は、スタッフの方が、なにやらとっても熱心に写真を撮っているところに出くわしました。

「これ、なんですかぁ?」

これぞ“キモカワ”の究極!? 世界一ブサイクでも見慣れるとカワイイ

じつはコレ、「ブロブフィッシュ」と呼ばれる深海魚。同館で地元漁師の船をチャータ―して行われる、深海底引き網漁にて取材日の前日捕獲されたものらしいのですが、ブロブフィッシュと呼ばれるウラナイカジカ科は現在までに7種確認されているのだとか。“全身世界一ブサイクな魚”に認定されている「ニュウドウカジカ」も、ブロブフィッシュの1種だそうです。しかし、今回捕獲された個体はどれにも当てはまらず、文献にも該当するものがないために、「新種ではなかろうか!?」と、謎の深海魚の出現に沸いていたさなか、タイムリーにもわれわれがおじゃましたというわけです。

残念ながら、この「ブロブフィッシュ」は取材中に息を引き取ってしまいましたが、そもそも深海と同じ環境を陸上で再現するのは不可能なわけで、「つまり深海魚にどこまで“疑似体験”させられるかが、われわれのチャレンジなんです!」と石垣氏。新種の認定には、数年以上かかってしまうケースも少なくないそうですが、到着していきなり、深海の奥の深さを垣間みる思いでした。

「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」ができるまで ~運命の出会い~

それではいよいよ深海水族館ツアーと行きたいところですが、その前に今回お話を伺う館長の石垣幸二氏の横顔を少しだけご紹介しておきたいと思います。静岡県下田市に生まれた石垣氏は、幼い頃より海と共に育ち、海外移住を夢見て日本大学国際関係学部に進みます。そして一旦は大手企業のサラリーマンになるものの、まるで運命に導かれるかのように海と関わる仕事をするようになっていきます。ここでは詳細を省きますが、2000年に自らブルーコーナーという会社を設立し、世界各国の水族館、博物館、大学の研究機関などに希少な海洋生物を納入するスペシャリスト、人呼んで“海の手配師”として活躍してきた人物なのです。

そんな石垣氏がなぜ水族館の館長になったのか・・・そこにもやはり運命的な出会いがありました。そもそものきっかけは、テレビでもおなじみの魚類学者「さかなクン」からの1本の電話だったそうです。
多忙な「さかなクン」が受け取りに行くことができない魚の輸送を、石垣氏に頼んできたのです。他ならぬさかなクンの頼みであらばと、受け取りに行った先が沼津港にある「佐政(さまさ)水産」の出荷場でした。もちろん、後に同社が「沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアム」を建てることになろうとは、まだ知る由もなかったわけですが・・・目の前に広がる駿河湾は水深2,500mの日本一深い湾。食用の魚に混ざって、珍しい深海魚が網にかかることも珍しくない環境ですから、石垣氏は「珍しい魚があがったら、すぐに買いに来ますから」と、仕入れ先としてご縁を結び、同社とのおつき合いが始まりました。

それから半年ほど経ったある日、佐政水産の専務とお会いする機会があったそうです。挨拶して5分も経たないうちに「沼津港に今ある出荷場に飲食店街をつくる計画があるんだけど、何か目玉が欲しいんだよね。水族館なんかどうかなと思ってるんだけど、とにかく地元の人が自慢できる施設を作りたいんだよ」と直球を投げられます。普通なら「検討します」とでも答えそうなものですが、「はい! できます!!」と5秒で答えた石垣氏。契約書を交わす暇もない出来事でしたが、どうやら、この瞬発力が運命を切り開いていくようです。

こうしてこの地に誕生したのが「港八十三番地」

「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」はこの一角にあります

石垣氏が「深海」にこだわったわけ

しかし、「できます!」とは言ったものの、この時点ではどんな水族館にするかは、もちろんノーアイデア。その上、2011年12月10日というオープン期日だけは決まっていて、設計からオープンまで準備期間1年と通常ではありえないタイムスケジュールです。しかも、仕事柄水族館事情に詳しかった石垣氏は、世はちょっとした水族館ブームで、翌2012年3月には京都水族館、5月にはスカイツリーのすみだ水族館と、大都市に続々と大型水族館がオープンすることも知っていました。そんな中、わざわざ沼津に人を呼ぶためには、個性的な特長を打ち出す必要があることは重々承知です。

熱い想いを語ってくださった石垣館長(左奥)と塩崎飼育長(右手)

そこでこだわったのが「日本一」なのです。世の中2番も4番も一緒、やはり1番じゃないとダメだ! そんな発想から、日本一の山である富士山のお膝元で、日本一深い湾である駿河湾の「深海魚」に特化した水族館にしようというコンセプトが固まっていきました。しかし、「深海」というコンセプトはこの時、急に降って沸いたものではなく、じつは数年前から石垣氏の胸の奥には、「深海」への熱い想いが芽生えていたようです。

石垣氏の会社ブルーコーナーでは、3,600種以上もの海洋生物を扱っていて、まさに“海の手配師”だったわけですが、ここまで来ると目新しい海洋生物はなかなか見つからず、ちょっとした限界を感じていたのだそうです。あとはもう「深海」を狙うしかない・・・と同時に「深海魚は儲からない」こともよくわかっていました。水族館専門の納入業者は世界に数社しかないそうですが、その中でも深海魚を専門にしている会社は1社もなく、捕獲に時間とお金がかかるうえ、捕まえても長く生きる保証はないことを考え合わせると、自分たちが深海魚の専門家になれば、ライバルはそう簡単には表れないだろうと、逆転の発想をしていたわけです。

そうは言っても、深海魚を捕るためのリスク(かかる費用とすぐ死んでしまうリスク)を考え合わせると、経営者としてそう簡単に決断をくだせないでいた・・・そんな矢先に持ち上がった水族館建設の話でしたから、ここを深海専門の水族館にすることで、いよいよ深海へチャレンジする踏ん切りがついたという一面もあるようです。そんな胸の奥に眠っていた思いまで、石垣氏は正直に打ち明けてくださいました(#^.^#)

石垣館長のお話は、何時間でも聞いていたいほどおもしろいっ!!

そうこうしながら「深海専門のユニークな水族館にする」ということだけは決まりましたが、水族館と名乗る以上、死んだ魚を並べておくわけにはいきません。ですが、幸いにも、ここ沼津港は深海魚の宝庫。毎日のように深海魚が水揚げされるわけですが、これまではカサゴなどごく少量の深海魚を食用にする他は、海へ返すか鳥の餌にしていたようですから、その深海魚を仕入れて、生かし続けることさえできれば、深海水族館としてやっていける可能性は十分ある! ・・・どうやら一筋の光が見えてきたようです。

ゴミをアイドルに!? 「深海魚」を生かすという大きなチャレンジ

しかしながら、深海魚を水族館に展示してスポットライトを浴びせるまでには「ゴミをアイドルにするような発想の転換が必要だった」と石垣氏。深海魚をアイドルにするためには、長く生かしておくためのノウハウが必須なわけで・・・そんななか、パートナーとしてお目に留めていただけたのが、イワキの「レイシー」製品だったのです!

この世界一マニアックな存在になりそうな同水族館の担当者として、白羽の矢が立ったのが外山でした。潜水調査船「しんかい6500」で有名な世界トップクラスの地球環境、海洋研究観測機関「JAMSTEC(ジャムステック)」などを長きに渡って担当してきた経験を見込まれてのことでした。しかし、当時はまだまだ深海に対して世の中の注目度は低く(この頃は深海ブームの兆しすらありませんでした)、「深海魚をどうやって生かすか?」などというノウハウは、存在すらしていなかったのです。ということは、すべて自分たちの手で、深海生物に深海の環境を“疑似体験”させられるような「水圧・水温・光」の問題をクリアしていかねばならないわけですが、長年全国の水族館を担当してきた外山にしても、研究用途以外で深海をメインテーマにした水族館の基本設計段階から関わるのは、生まれて初めての経験でした。

さて、いよいよここから「深海魚をどう生かすか?」「どうやって深海魚で注目度を高めるのか?」という、これまで誰もしたことのないチャレンジが始まるのですが・・・この続きは、次回の≪後編≫を楽しみにお待ちください♪

以上、沼津より、こんなところにイワキです[番外編]、「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムレポート」前編をお届けしました(^^ゞ

 

沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム

通常営業時間 10:00〜18:00(7月中旬から8月末は19:00まで)年中無休(保守点検のため臨時休業の場合あり)
所在地 静岡県沼津市千本港町83番地
電話 055-954-0606
アクセス JR東海道線「沼津駅」南口よりバスで約15分「沼津港」下車

車でお越しの方は、東名沼津ICより約20~30分

 

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