このコーナーでは、様々な分野で使われているイワキのポンプの中から、「え?こんなところに?!」と思っていただけるポンプの現場にスポットを当て、いろんなシーンで活躍するポンプを紹介しています。

今回メルマガ編集部こと「イワ気になる隊」が向かったのは、大自然に囲まれた長野県安曇野市。信州安曇野といえば、名水百選にも選ばれている北アルプスの湧き水で有名な場所。そのおいしい水と豊かな大地は、わさび、りんご、ぶどう、蕎麦、さらには乳製品やワインなど、たくさんの特産物を育んでいます。

そんな自然の恵みの中で「いちごづくり」を応援するポンプがあると聞きつけ、イワキカーを走らせたイワ気になる隊。向かった先はありがたくも今回快く取材をお受けくださった安曇野のいちご農家、NAT’s Berry field (ナッツベリーフィールド)様(以下、ナッツベリー様)です。

いちご農家の朝は早く、日の出からまだ間もない澄み切った空気の中、松本営業所の浜田諭(はまださとし)さんと合流し、早朝取材、スタートです。

長野県安曇野市

おいしい「夏いちご」を育てたい!

「いちご」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「クリスマスケーキ」ではないでしょうか?

真っ白な生クリームの上に真っ赤ないちごが乗ったショートケーキは、まさにケーキの王道といっても過言ではありませんよね。また、スーパーなどの店先にいちごが並ぶのも冬から春先にかけてですので、「いちごの旬は冬〜春」と思っている方も多いと思いますが、ナッツベリー様が育てているのは、四季を通して長い間楽しめる「四季成りいちご」です。品種としては長野県でしか栽培できない「サマープリンセス」をはじめ、「ペチカエバー」や「すずあかね」になりますが、いずれも6月〜11月ごろまで収穫ができるので、別名「夏いちご」や「夏秋いちご」などと呼ばれています。

実はここ安曇野は日本有数の「四季成りいちご」の生産地。出荷量は北海道を抑え日本一を誇ります。主にお菓子やジャムなどの加工品に使われており、出荷先はほとんどが関西方面だそうです。どおりで関東人ばかりのイワ気になる隊には馴染みがないはずです。でも、知らないのは私たちだけで、大阪界隈ではすでに10〜15年前から「安曇野いちご」はしっかりとブランド化され、レストランやお菓子やさんで大切に使われているそうです。

「まずはご覧になりますか?」と、ハウスに案内していただいたのは、ナッツベリーフィールドの吉武さん。1つのビニールハウスに約2000株の夏いちごを、全6棟で栽培しています。一番手前のハウスに入った瞬間、私達の口からこぼれたのは「わ〜、可愛い〜」という言葉。青々とした葉っぱの中に「夏いちご」のキュートな赤い実が、ちょこんと顔を出しているのです。

「ちょっといちごが少なく感じられるかもしれませんが、昨日がびっくりするほどの大収穫だったので・・・。もうずーっと出荷作業をやっていましたよ(笑)」

いちごは気温の変化とお日様の光に敏感で、あっというまに赤く色づくんだそうです。いつその時期を迎えるかはいちご次第。その瞬間を逃したら、一番おいしい時に出荷できなくなりますから、常に真剣勝負です。自然と向き合うって、そういうことなんですね。もし取材日が昨日だったら、こんな風にゆっくりとお話を伺えなかったかもしれません。ありがとう、いちごさん。

ビニールハウス

いざ、ハウスへ!

高設ベンチで四季なりいちごを栽培

ただいま、いちごを収穫中

四季なりいちご

粒の揃ったいちご

ハウス内は、人の胸から腰の高さで続く「いちごの道」がまっすぐに何本も伸びています。これは四季成りいちごに適した「高設ベンチ」という栽培方法です。腰をかがめることがなく作業ができる上に、液体の肥料を絶妙なタイミングでいちごに与えることができるそうです。

「赤くなったのを見繕って、自由に食べてみてください」と吉武さん。でも、イチゴ狩りの経験も浅いイワ気になる隊は、いちごを目の前にしてモジモジ。大切ないちごの茎を変な風に折ってしまっては大変です。

そこでまず、いちご摘みのレクチャーからお願いしました。いちごの実をそっと下から支えるように持ち、親指をヘタのすぐ上に置いて軽くねじるようにすると、ほろっと簡単に採れることがわかりました。

イチゴ摘みレクチャー

イチゴ摘みレクチャー おおーっという感嘆詞とともに収穫完了

手のひらの上のいちご

こちらが正真正銘の「朝採りいちご」です

小さくてキュッと実が締まっているので、ちょっと酸っぱいかも?と思いながら食べてみると、甘い! 驚くほど甘いんです。今回は人気の「ペチカエバー」、安曇野が生んだ繊細なお姫様「サマープリンセス」、そして安定収穫の「すずあかり」の3種類を試食させていただきましたが、甘さと旨味の中にもそれぞれに個性があり、いちごの奥深さを改めて感じました。

そうなんです。ナッツベリー様のこだわりは、この「甘くておいしい」こと。一般的な夏秋いちごは酸味が強く、加工品に使われるために作られていますが、ナッツベリー様が手がけるいちごは、「そのまま食べてもおいしい夏いちご」なんです。「果物は甘い方が間違いなくおいしい」という信念のもと、様々なチャレンジを重ねていらっしゃいます。

ふと葉っぱ見ると、先端に美しい「水玉」が・・・。すかさず「この水玉はなんですか?」と素朴な疑問を繰り出したイワ気になる隊。まさか、ハウスの中に水撒きしているわけではなさそうですし、農薬を散布したわけでもなさそうです。

「これは〝葉水〟といって、土壌に水分が行き渡っているとこんな風になるんです。おいしく育っている証拠ですね」と、吉武さん。

よく見てみると、葉っぱはもちろん、収穫後の茎からも、大粒の水滴がこぼれ落ちそうになっています。これぞ「みずみずしさ」の極みです。

これもイワキのポンプが一生懸命、舞台裏で水分と養分を送っているからなのでしょう。ポンプの頑張りがこのように目に見える形となって現れるとは思っても見なかったので、なんだかとっても嬉しくなりました。

葉水

まるでビーズのような葉水。美しいです。

また、今年から試験的にハチによる受粉を始めたそうで、ハウスの中には小さなミツバチが健気に仕事をしていました。こんな間近でミツバチを見たのも久しぶりです。ハウスの中は自然でいっぱいでした。

いちごづくりを支えるポンプとご対面

それではいよいよ、いちごづくりを支えるポンプを見せていただきましょう。ナッツベリー様でお使いになっているのは、こちらのシステムです!

肥料を注入する電磁定量ポンプ

この2台の電磁定量ポンプで、肥料をいちごたちに送っています

2台の電磁定量ポンプを使って、2種類の肥料をバランスよく配合して与えるために「EC値」(液体に含まれる肥料のおおよその分量)を管理しています。液が濃すぎると分離してしまいますし、薄すぎても効果がありません。目指すのはそれぞれの品種に最適な「オリジナルブレンド」を作ること。まだまだ「発展途上」であると吉武さんは言いますが、地道な研究を重ねてきた結果が、あの美味しくて可愛いいちごたちなんですね。

とはいえ、なにせ相手にしているのは自然です。昨日OKだった条件が今日OKとは限りません。日々変化する気温やいちごの成長具合に合わせていく必要があります。そこで賢くポンプを制御しているのが、このコーナー初登場、「ウォルケムコントローラW600」なのです。

オンラインで水処理の集中管理が可能なコントローラ

ウォルケムコントローラW600 各種設定も大型タッチパネルディスプレイで簡単に行えます

コンパクトながらもアラームやメール送信が可能なコストパフォーマンスに優れた水処理コントローラで、「リモートアクセス機能」も備えているので、ご自宅からも設定できる優れものです。

では、どんないきさつでこちらのシステムを使うようになったのか、詳しくお聞きしてみましょう。

── どんなきっかけでイワキのポンプをお知りになったんですか?

吉武「一言でいうと、私の(いちごの)師匠がイワキのポンプを使っていたんです。丈夫だからいいぞと勧めてもらったのが、最初のきっかけでした」

ナッツベリー様が夏いちごづくりを始めたのは、2018年の4月のこと。社長は奥様のNATSUKO様で、影となり日向となって支えているのが、旦那様の吉武さん。二人三脚で夏いちごづくりに取り組んでこられ、開業前の1年間は夫婦揃って師匠の元でみっちりと「いちごづくりのイロハ」を叩き込まれたそうですが、その時出会ったのがイワキのポンプだったのです。

吉武「勉強のためにいろんな現場を見て歩いたのですが、いちご農家が使っているポンプの多くはアナログ式のポンプが多かったんですね。しかもどこか海外製だったと思います。自分で使うならアナログではなく、使った分が数値でわかるものがいいなと思っていました。そこでイワキさんのサイトを調べて、メールで問い合わせをしたんです。そうしたらすぐに元松本営業所所長の樽井所長(現静岡支店長)から電話がありまして・・・そこからのお付き合いですね」

自らいろいろと調べて問い合わせる。元営業マンだった吉武さんにとっては、なんの苦もなくできたことなのでしょう。そして元所長と同行したのが、入社してまもない浜田さんだったのです。

吉武「確か、入社1ヶ月とか、そのくらいでしたよね」

浜田「はい。入社したてで右も左もわからない状態でした」

ベテラン所長はポンプには詳しいけれど、ネットが苦手なアナログ派。一方新人社員は、ポンプの知識はないけれど、ネットもメール使いこなせる今どき派。この一見凸凹コンビに見える2人が、吉武さんの思いを実現するために実にいいコンビネーションを発揮します。そして2人の知識を総動員してお勧めしたのが「ウォルケムコントローラ W600」なのです。

── 実際に使ってみていかがでしたか?

吉武「そうですね。自分で思い描いていたことが実現できています。操作もタッチパネルで簡単にできますし、「あ、明日、あれをこうしよう」と思いついたときに、自宅で設定変更ができるので、そこがとても便利です」

── リモート機能ですね。もう少し具体的に教えていただけますか?

吉武「たとえば、〝今日は気温が高かったら、水やりを一回増やそう〟と思ったときに、すぐに設定を変更できるんです。自宅からハウスまでは車で片道15分くらいですが、往復で30分、設定変更してなんやかんややっていると、あっという間に1時間くらいすぐに経ってしまいます。それが自宅で、思いついたときにすぐできるので、大変助かっています」

── トラブルなどはなかったのでしょうか?

「あー、ありましたねー。しょっぱなに・・・」と、顔を見合わせて笑う吉武さんと浜田さん。導入後、コントローラに電磁弁を設置したらすぐにショートしてしまったそうです。

吉武「あの時は驚きましたね。なんでこんなにすぐにショートするの??って。こんなことってある??って」

すぐさま原因追求に当たった樽井元所長は、単なる「発注ミス」であったことに気づきます。発注した電磁弁と、コントローラの電圧がマッチしていなかったのです。

吉武「すぐに新品の正しい電磁弁を持って、飛んできてくれました。交換してくれて、めでたしめでたしです。あの時は助かりました」

── その他に「トラブル」があったらお聞かせください。

吉武「トラブルというか、装置が長野の夜の寒さに耐えきれなかったというか・・・」

浜田「その日の夜は、とっても冷え込んだのでしょうね。流量計の中に残っていた水が夜間に凍結して、翌日の朝見たら流量計の表示板が氷で突き破られていたことがありましたね」

吉武「安曇野の夜、おそるべしです(笑)この時も早急に交換していただいて。それからは気をつけるようになったので、今のところ同じトラブルは起きていません」

── では、この機会にイワキに対する熱いご要望などがありましたら、ぜひ!お聞かせください!

吉武「そうですね。このコントローラにはアラーム機能がもっと柔軟に設定できるようになったら、言うことなしです。例えば〝スイッチ押し忘れていますよ〟と、アラームで教えてくれるとかですね」

というのも、つい最近こんなことがあったそうです。毎日何回か水やりをするのですが、ある1棟のいちごだけが、お昼を過ぎたあたりから、しなしな〜と元気がなくなってしまったそうです。なんでだ?とコントローラを見に行ったら、スイッチを押し忘れていたそうです。今回はすぐに異変に気付いてリカバリーできたからよかったですが、「水をやる」という工程がひとつなくなるだけでも、いちごにとっては致命傷になることも考えられます。

吉武「今の所、アラームの必要性を感じるのは、人為的ミス。ほとんどが凡ミスです。そこを技術の力でカバーしてくれたら、助かります」

── 貴重なご意見、ありがとうございました。

そういえば・・・と、浜田さんに向かって、いきなり話を始める吉武さん。

吉武「液肥が少なくなったら教えてくれることってできませんか? これも最近あったのですが、気付いたら片方の液が空っぽになっていたことがあったんです」

浜田「えっと、その場合でしたら・・・「フローチェッカー」「レベルセンサ」をつければ可能ですね」

吉武「そうか、センサをつければいいのか。ってことは・・・・」

目の前で「リアル相談」が繰り広げられています。誠心誠意答える浜田さんの姿勢には、とても好感が持てました。今では吉武さんの質問に的確に答え、提案する浜田さん。素晴らしく成長されたんですね。

浜田「今年、新しくオプションパーツ用のカタログを作りましたので、すぐにお持ちします」

吉武「ありがとう。それ、読みたい!」

── イワ気になる隊も読みたい!(笑)

オプションパーツ用のカタログに興味のある方は、こちらからダウンロードしていただくか、担当営業マンまでお問合せください。

さらに話は弾み、今後は様々なプロセスを全部ネットに繋いで管理するIoT化していきたいという吉武さん。

吉武「今はEC値の管理だけですが、将来的にはペーハー値や温度(内気・外気)、風向きなども一括管理していきたいと思っています。でも、今のコントローラだとオーバーフローですよね。私たちくらいの小さな農家が、効率よくデータ管理できる〝イワキ農業パック〟なんて作ってもらえるとありがたいんですけどね(笑)」

浜田「貴重なご意見ありがとうございます。まずはW900にアップグレードしていただけたら、ご希望に添えるかもれません。価格は2倍ですが、機能は4倍以上ですから!」

浜田さん、もうすっかり頼もしい営業マンですね(笑)

そんな話を聞いているかのように、一羽の鳥がすーっと打ち合わせ場所を横切りました。近くで綺麗な声も聞こえてきます。

吉武さんによると、打ち合わせ場所に使っているテントの一角に、毎年ツバメやセキレイが巣を作るんだそうです。ああ、ここは安曇野なんだ。自然っていいなぁ〜・・・。

鳥たちの声に癒されたイワ気になる隊でした。

 

NAT’s Berry field (ナッツベリーフィールド)

所在地 長野県安曇野市三郷明盛3864
代表 NATSUKO(吉武 奈津子)
事業内容 夏秋いちごの生産販売、ジャム等加工品の販売

 

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