このコーナーでは、様々な分野で使われているイワキのポンプの中から、「え?こんなところに?!」と思っていただける現場にスポットを当て、いろんなシーンで活躍する事例をご紹介しています。

我々イワキは、お客様のためを思ってポンプを作り続けておりますが、実際にポンプを使うのは私たちではなくお客様です。しっかり働いているか? ちゃんとお役に立てているのか? ポンプに対する想いは尽きません。

そして与えられた使命を真摯に果たしているポンプの姿を見ることは、私たちにとって何事にも代えがたい喜びでもあるのです。まるで社会に旅立った愛しい我が子の姿を見るように…。

今回、そんな素晴らしい機会を与えてくださったのがカネコ種苗株式会社様です。イワキとは足掛け30年になろうかというほどの長いお付き合いで、展示会などでも大変お世話になっているお客様です。

イワキのメルマガ&ブログを読んでくださっていることもあり、快く取材のご協力に応じてくださいました。まずはこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!!

カネコ種苗様本社に突撃!

カネコ種苗様の本社は、群馬県の県庁所在地前橋市にあります。群馬といえば「こんにゃく」「温泉」「ぐんまちゃん」が有名ですが、今回はどんなポンプに会えるのか?? イワ気になる隊、ワクワクしながらの出発です!

カネコ種苗本社の最寄り駅は、上越線と両毛線が乗り入れるJRの新前橋駅。地方都市=車で移動というイメージがありましたが、本社はJR新前橋駅から僅か徒歩5分。抜群の地の利です。駅から大通りに出るとほどなく、カネコ種苗様の看板が見えてきました。

 

「種」と「苗」という社名の通り、カネコ種苗様のビジネスの主軸は種や苗の育種開発と販売ですが、農薬の販売や温室の製造販売、さらには資材の調達に至るまで各種専門事業部があり、農作物を作るために必要な事業を丸ごと手かげていらっしゃいます。

今回お話を伺ったのは、システム販売部取締役部長の金井様。システム販売部は土を使わずに野菜を育てる養液栽培(液肥栽培)のプラントシステムを扱う部署なのですが、このプラントこそイワキのポンプが活躍するステージなんです。

以前「野菜の水耕栽培で活躍するポンプ(こんなところにイワキです Vol.5)」でもご紹介しましたが、イワキのポンプが縁の下の力持ちとなって野菜たちの成長を日々見守っているのです。

── 随分と長いお付き合いをいただきありがとうございます。まずは「イワキとの馴れ初め」からお聞かせいただけますか?

「25年以上にはなると思います。元々は他のメーカーさんのポンプを使っていたのですが、弊社のプラントの仕様変更や扱う種類が増えたことで、次第にスペック的に合わなくなってきてしまったんです。その頃研究所の者がイワキさんをご紹介いただき、お付き合いが始まったと聞いております」

金井様のお話しによると、しばらくは他社様のポンプを併用していたのですが、現在はほぼイワキのポンプだそうです。本当にありがたいことです。

── イワキのポンプは日々、どのような仕事をしているのでしょうか?

「野菜に与える必要な栄養等が入った養液(液肥)を、最適な濃度に希釈して一定量与えるという役割です。これがとても細かい配慮が必要でして、作物の種類ごとにはもちろん、生育のステージによっても必要とする栄養や濃度などが違います。その細かい作業を一手に引き受けて、確実に必要な養液を作物に届けているのがイワキのポンプなんです」

早い話が、トマトとイチゴでは養液(液肥)そのものも、与えるタイミングもまるで違うということです。

実は「サンチュ」の仕掛人だった!

水を使わずに育つ野菜といえば、カイワレや豆苗などが思い浮かびますが、三つ葉にミョウガに万能ネギ、サンチュにレタス、トマト、最近若い女性に人気のパクチーなど、今では驚くほどたくさんの野菜が養液栽培(液肥栽培)で育てられています。

「ちなみに、サンチュを最初に日本に広めたのはうちなんです」

── え? そうなんですか?!

今では焼肉屋さんはもちろん、スーパーにもフツーに並んでいるサンチュですが、そういわれればずっと昔からある物ではありませんよね。気がついたらいつの間にか身近な存在になっていました。その陰には社員の皆さんの並々ならぬ努力があったのです。

カネコ種苗様がサンチュの養液栽培(液肥栽培)を始めたのはソウルオリンピックの頃だそうですが、社員の方が街のスーパーにマネキンとして立って、「サンチュ美味しいですよ」「いかがですか?」と実演販売していたこともあったそうですよ。

── 現在では何種類くらい作られているのでしょうか?

「大きな柱はレタスなどの葉菜、トマト、イチゴですが、プラントでいえば8種類あります」

カネコ種苗様は現在、イチゴ、トマト、キュウリ、パプリカ、ミョウガ、レタスなどの葉菜など、8種類のプラントを製造販売しています。レタスひとつでも何品種もあり、新しい品種も次々に生まれています。

数にしたらそれこそ膨大なものになるのですが、それぞれ作物の個性に合わせて、養液(液肥)の濃度、量を調整しているのが、イワキの電磁定量ポンプです。

液肥の注入に使用されている電磁定量ポンプ

── イワキのポンプをお使いになっていかがですか? 実感をお聞かせください。

「30年近くお付き合いしていればいろいろありましたが(笑)、何か起きてもすぐに対応してくれて助かっています。幸い事業所も近くですし(注:イワキ熊谷営業所が担当です)、こまめに顔を出してくれるので話も早くてね」(ありがとうございます!)

── イワキの強みはどこですか?

「そうですね。バラエティに富んでいるところですよね。カネコのプラントも種類が多いし、規模も大小様々あります。マッチする選択肢が多いのがとてもありがたいんです」

こちらこそありがとうございます! お互いのニーズが合うほど嬉しいことはありません。

養液栽培(液肥栽培)の過去と未来

さて、養液栽培(液肥栽培)といえばここ20〜30年頃に広まったというイメージを持つ方も多いのですが、その歴史は想像以上に古く、昭和26年頃アメリカの進駐軍が持ち込んだと言われています。それから20年して国内メーカーが独自の技術を開発し、自分たちのプラントを組んで発売を始めたのが昭和40年代半ば頃。カネコ種苗様が養液栽培(液肥栽培)に着手したのは、さらに20年後のことでした。

「うちの場合、オーナーの鶴の一声で、水耕栽培(養液栽培)を手がけることになりました。今思えば先見の明があったと言えるのかもしれません」

本来野菜は土で育てるもの。水と太陽の恵みを受けて、スクスクと育てていくもの。ではありますが、作り手の様々な事情やニーズによって、育て方も様変わりしています。

「どちらがいい、ということではなしに、どちらも大切です。適材適所で選んでいけば良いと思うんです」

金井部長が目指すのは、養液栽培(液肥栽培)との「共存」。互いの良さを認めあい、要所要所で補いあう関係を、これからも作って行きたいとお考えです。

そして今また、養液栽培(液肥栽培)の新たな波が来ていると感じているそうです。でも、その波は今までとはちょっと様子が違うようで・・・

本社の中庭には二代目金子才十郎氏の石碑が

── どのあたりに違いを感じますか?

「今までは畑やビニールハウスをやっていた農家さんが、新しい試みとして手がけるようになるパターンが主だったのですが、ここ5年くらいのうちに異業種の大手企業の参入がとても増えましたね」

 

名だたる大企業が一事業部として「農業」を選択する動きが活発になっており、いわゆる「植物工場」の数もぐっと増えています。それだけ食の多様化、需要の増加に対して農家が減って来ている現実もあります。安定供給を確保するためには「次なる一手」が必要で、それが養液栽培(液肥栽培)なのでしょう。

「たとえば、ショートケーキに乗っているイチゴは一年中必要です。日本が品薄のときは海外から輸入していますが、量の確保や価格面でもご苦労されていたと思うんです。でも養液栽培(液肥栽培)だと夏場の栽培も可能なので、それだけ安定した生産量も見込めます」

── なるほど! 養液栽培(液肥栽培)にはそういうメリットもあるのですね

「メリットの面でもっというと、養液栽培(液肥栽培)には“機能性野菜”という新たな可能性もあるんです」

── 機能性野菜・・・ですか? サプリメントみたいな?

「その通り。たとえば、腎臓機能が落ちている方でも食べられる低カリウムのレタスや、骨粗しょう症予防のために鉄分たっぷりな野菜というように、野菜に含まれる栄養素をコントロールすることができるんです」

それはスゴイ! これならお医者様から摂取制限するように言われていた方でも安心して食べられますね。まさに生のサプリメント! これぞ次世代の野菜だといっても過言ではないでしょう。

「いのち」を相手にしている自負と責任

そんな最先端の技術を操りながらも、カネコ種苗様が創業以来変わらずに大切にしていることがあります。それは「作物の育て方を伝える」こと。「プラントを売る」ということは、機械を売ればいいというものではありません。また、設備さえあれば、野菜は勝手にすくすく育つ・・・というものでもありません。

設備導入は最初の一歩。そこから作物を「育てる」という本来の作業が待っているのです。

── カネコ種苗さんならではのサポートとは、何ですか?

「最初は良いんですよね。でも、長く続けていくにつれいろんなことが起こるものです。なんといっても相手は生き物ですから、こちらの想い通りになんてなりません。そこにどう寄り添い、どうサポートしていくかが、我々「種苗屋」の誇りでもあり、生きる道でもあると思っています」

カネコ種苗様は、プラント納入先に研究所の技術者自らが足を運び、事細かに栽培技術を伝えているそうです。先ほども言ったように、新規参入が増えている今、農業の知識がまったくない方が養液栽培(液肥栽培)を始めるケースも増えています。そういう方でも分かるように伝えるにはどうすればいいか? マニュアル作りひとつにしても、日々研究を重ねる毎日だと言います。

「我々は30年以上、ずーっとやって来ていますからね。種まきから収穫まで何十回も何百回もやってきていないと、解決できないことってたくさんあるんです」

かつて、イワキが水耕栽培の設備を展示会に出展する際にも、細やかな栽培指導をしてくださったカネコ種苗様。そのおかげで、のびのびと育った野菜を多くの方に見ていただくことができました。その節は本当にお世話になりました。

「プラントシステムの知識と作物を育てる知識。この両者がバランスよくあってこその私たちだと思うんです。うちには機械のプロも、農業のプロもいます。いろんなプロフェッショナルの知識が混ざりあって、総合的な知識と経験を持って、育て方を前方向から伝えて行く。それが種苗屋としての誇りであり、これからの生きる道だと思っています」

素晴らしい! プラントとポンプ。作る物は違っても、ものづくりとしての根幹には共鳴するところがたくさんありました。設備を売るのは第一歩。そこから人と人との本当のつき合いが始まるんですね。

貴重なお話をありがとうございました!!

後編へ続く

カネコ種苗株式会社(KANEKO SEEDS CO.,LTD.)

創立 1947年(昭和22年)6月17日
本社所在地 群馬県前橋市古市町一丁目50-12
主な事業内容 ・農産種苗の生産及び販売
・球根、タネ、苗、花き園芸資材の生産及び販売
・造園工事の設計及び施工
・温室、農業用生産資材の製造及び販売
・農業薬品の販売・樹脂資材の販売
・養液栽培システムの販売

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