残された社史に基づき、イワキの歴史を紐解いていくこのコーナー。
文字通り「ポンプに賭けた」男たちの熱いドラマを、お伝えしていきます。

1994(平成6)年「システムプロジェクト」始動!

前回は、イワキがポンプ単体ではなくコントロールシステムを付加価値とした営業戦略を打ち出したところまでをお話しました。「中国工業技術試験所(中工試)」や「海洋生物環境研究所(海生研)」プロジェクトでの経験が糧となり、ポンプを「システム」として販売するための専門の部署も立ち上がりました。この「システムプロジェクト」通称「シスプロ」という部署が立ち上がったのは1994(平成6)年のこと。この年はまさにイワキケミカルポンプの“システム元年”と呼ぶべき年となったわけです。

じつは、その前年(1993年)には「特販チーム」として、東京で2名、大阪で2名、名古屋で1名のメンバーが選ばれ、当時、海外から輸入していた「ワーケシャーポンプ※」などの新しい売り方を模索するためのプロジェクトチームが編成されていました。
※現 サニタリーロータリーポンプ WRUシリーズ

このチームメンバーは特定のお客様を担当せず、まったく自由な発想で新規顧客を開拓し、時には営業と同行して商談をするも彼らが伝票を切ることはない…つまり、売上げという数字に縛られることなく自由に活動できるという、いわば技術と営業の垣根を外したようなチームでした。

この特販チームが先駆者としての一定の役割を終え、発展的解消の後に生まれたのが「シスプロ」だったわけですが、今となって思えば、同プロジェクトの自由な発想と、それを認めたイワキという会社の度量があってこそ、ただの“ポンプ屋”から“流体制御のプロ”として飛躍できたのかもしれません。また、必要に応じて営業に技術者が同行するというスタイルは、今もイワキの伝統として、脈々と受け継がれています。

大手食品メーカーから舞い込んだ“とある”相談

ここで、前回ご紹介した複数液をインラインで連続混合できる【ブレンディングシステム IMIX】誕生の瞬間を振り返りたいと思います。きっかけは、ある展示会でした。イワキが食品用として展示していた「ワーケシャーポンプ」がとある大手食品メーカーのご担当者の目に留まり、新製品開発に関する相談が持ち込まれたのです。

同社では7種類以上の原材料をミックスし、チューブに充填してそのままパンなどに直接塗れるようなまったく新しい発想の商品を開発していたようです。しかし、その原材料の中には「お酢」も含まれており、空気に触れると酸化して味が変わってしまうことから、なんとか空気に触れない状態でミックスする方法はないだろうか、と考えておられたようです。一般的には、複数液の混合は「タンク」で行うものですが、既存の固定観念を脱却すれば、なんとかこの要望に応えられるのではないだろうか・・・「シスプロ」として、常に新しい発想を求められていた我々にとって、ぜひともチャンジしたい案件でした。

この若きご担当者の新製品開発に賭ける熱意は相当なもので、食品業界にはまったく実績のないイワキという会社と、リスクを承知でタッグを組んでくださったのです。詳しく聞けば、原材料の中には、お酢のような液体だけでなく、たとえばピクルスのような固形物を細かく砕いて混ぜたり、マスタードのように粘度の高い物質を少量混ぜ込んだりという工程も必要でした。

粘度のない液体に、粘度のあるものを少量混ぜ込み、全体の濃度を一定化するという技術はかなり難しいものでしたが、気が遠くなる程のテストを繰り返し、ついにイワキ独自の「ブレンディングシステム」を完成させることができました。複数の移送液を配管内でミックスできるため混合タンク自体が不要となり、そのまま充填工程へ移すことも可能になるという画期的なシステムでした。

ポンプで複数液を移送しながら、塩分やアルコール濃度などを測定し、流量を調節することのできるこのシステムが完成したことで、イワキは「今こそ食品業界のお役に立とう!」と決意し、翌年、1995(平成7)年に、「食品プロジェクト」を立ち上げることになったのですが・・・この続きは次号のお楽しみということで。

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