このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指しつつ、クスッと笑える「今日の一句」づくりにも、力を注いでおります。

今回の用語は>>>>> NPSHa(エヌピーエスエイチエー)

【NPSHa】エヌピーエスエイチエー
「Net Positive Suction Head available」の頭文字をとったもの。日本語では「有効吸込みヘッド」。単位は m で表される。

すでに「NPSHr」は説明済みですが、それとぜひセットで覚えていただきたいのが「NPSHa」です。最後が「r」と「a」の違いだけなので、うっかり「小さいことは気にしない〜」とやり過ごしてしまいそうになりますが、この違いがキチンとわかってこそのポンプマン!ということで、今回もじっくりと説明して行きましょう。

では、言葉の違いから見てみましょう。NPSHaの「a」は「available」のa。weblio英語翻訳の力を借りると、「(すぐに)利用できる」「入手できる」とありました。

一方、NPSHrの「r」は「required」の略。同じくweblio英語翻訳で調べると、「必要な」「必須な」という意味だと書いてありました。

かたや「必要なもの」、かたや「すぐに利用できて、手に入るもの」・・・
うーん、言葉だけ見ていると、まったくもってピンと来ないのでポンプ的解釈で日本語にしてみます。

  • NPSHr:必要吸込みヘッド
  • NPSHa:有効吸込みヘッド

はい。これなら違いがスッキリしましたね。

「必要」と「有効」の違いは、これから明らかにして行きますが、その前に大事なことをひとつ、覚えておいてください。

それは、どんなときでも、何があっても

【NPSHr】(必要吸込みヘッド) < 【NPSHa】 (有効吸込みヘッド)

を死守せねばならない! ということです。この関係性が壊れてしまうと、キャビテーションが起こったりして、ポンプに致命傷を負わせかねないのです。

では、NPSHaとはなんぞや? を、楽しく説明していきましょう。
ここに大きなタンクがあります。たとえばポンプが快適に動くためには、水面を常にポンプ吸込み口中心から2m以上キープしておく必要があるという場合に、「それってホントに2m以上ありますか?!」という素朴な問いかけ。それが、NPSHaなのです。

NPSHaの算出説明イラスト

エンジニアより一言

NPSHaは水面に掛かる圧力(通常は大気圧)や、液温により変化する飽和蒸気圧、さらに吸込み配管抵抗に影響されます。そのため例えば吸込み実揚程が2mだったとしても、NPSHaが2mとは限りません。運転状態に応じて最終的にポンプの吸込み口で得られる液体の残存圧力を揚程換算したものがNPSHaとなります。

飽和蒸気圧は液体の性質とその液温により大きく変化します。例えば100℃の水の飽和蒸気圧は大気圧に等しくなりますので、第一項の分子は0となります。そして地球上では大気圧が掛かるのでPAに代入すると10.33mが予め無条件で得られ、絶対真空で基準(=0m)となります。

従って吸込み実揚程が2mだったとしても、NPSHaは100℃の水の場合は2-Hfsとなり2m弱になってしまいますが、上記例の25℃の水の場合は12-Hfsとなり10m程度は確保できると予想されます。

重要になるのは、吸込み配管の形状や、ポンプを設置する位置(環境)です。

例えば、ポンプにつながる吸込み配管がスッキリ直線でつながっている場合はいいのですが、その間にくねくね曲がるひねくれ配管が使われていたとしたら!!!

直管の場合と同じ距離だとしても、ひとつ「くね」と曲がる度に、それ相応のエネルギーが必要になりNPSHaはマイナスされてしまうのです。

ポンプにとっては大誤算! 曲りだけでなく分岐や合流、または液の粘度などによって配管抵抗Hfsが増えてしまったために吸込み不良となってしまうわけです。ずーっと、永遠に、実力以上のことをさせられたとしたら、そりゃポンプだって悲しくなりますよねぇ・・・。

人生もポンプのチューブも、「曲がり道」はなにかと困難が待っているのかもしれません。思わず渡辺真知子のデビュー曲を口ずさみたくなりました。わかる人だけわかってください((・´∀’・))

曲りだけでなく、配管途中にあるバルブによって、溶液の流れる道が細くなっている場合も、局部的に過大流速になるので要注意です。配管の太さは充分あったとしても、その中の1カ所でも狭いところがあったとしたら、そこがボトルネックとなって渋滞を起こしてしまいます。

今まで3車線あって、快適に走っていた高速道路が、突如一車線になったとしたら、どんな渋滞が巻き起こるか、すぐに想像できますよね。それが吸込み配管の内部で起こったとしたら、こりゃえらいこっちゃ!になるわけです。

ダイヤフラムバルブやストレーナなど、流路が複雑なものは特に「どのくらいロスがでるか」を、あらかじめ明確にしておくことが大切です。

エンジニアより一言

NPSHaが不足する原因は様々です。

NPSHaが不足する原因 対策
押込み高さが少ない
吸上げ高さが高すぎる
  • タンク液面レベルを上げる
  • ポンプの据付け位置を低くする
配管抵抗が大きい
  • 配管を太く、短く、まっすぐにする
  • より抵抗の少ない配管やバルブなどに変更する
給液タンク液面の圧力が低い
  • 密閉タンクの場合、窒素ガスなどで加圧する
  • 真空タンクの場合、真空度を下げる
蒸気圧が高い
  • ポンプ入口での液温度を下げ、蒸気圧を下げる

この他、NPSHrの低い別のポンプを選定することで対応する場合もあります。

NPSHaが不足する原因イラスト

このように、ポンプの固定値であるNPSHrよりも、常にNPSHaが大きくなければならない。これがポンプの宿命であり設置する際の必要条件です。

逆に言えば、吸い込み口は太く短くまっすぐに!を貫いていけば、ポンプは良い仕事をし続けてくれるのです。
大事なことなので、もう一度言います。

【NPSHr】(必要吸込みヘッド) < 【NPSHa】(有効吸込みヘッド)

この関係性を守ってくださいね。

ただし、計算値には若干の誤差が生じる可能性がありますので、安全のため0.5m以上の余裕を持たせることも忘れないでください。

今日の一句

人生もポンプの吸込み配管も、曲がり道と速度超過にゃ要注意。
くねくねする分、ロスも出る。
正しい道を、まっすぐゆっくり行くがよし。

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