前回から始まった「ポンプなるほど」の新シリーズ! ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えつつ、楽しく軽やかに解説いたします。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説、第2回目のスタートです。

今回の用語は>>>>>背圧弁

【背圧弁】 Back pressure valve
定量ポンプの吐出配管上に設置し、オーバーフィード現象やサイホン現象を防止する圧力調整弁のこと。圧力(背圧)をかけることにより、規定量より過大に吐出されることを防ぎます。

背圧弁は定量ポンプで使用されるポンプアクセサリーのひとつです。定量ポンプというものは、名前の通り、決められた量の流体を、きっちりと確実に送るのがお役目です。

ところが、吐出と吸込みが交互に行われる移送液は、いったん流れ出したら、もう止まりません。慣性の法則が働いて、じゃんじゃんジャンジャン流れてしまい、ほっとけば決めた量の2倍くらい、気前良く流してしまいます。これが人間ならば、「豪快でステキ♪」ってことになるのでしょうが、定量ポンプとなると、もちろんそういうわけにはいきません。「ちっとも定量じゃないじゃん」と、役に立たないどころじゃなくて、かえって迷惑をかけることになってしまうのです。

そこで、燦然とスポットが当たるのが「背圧弁」! 景気よくジャンジャン先へ行こうとする流れに対し、大きな壁の関所を設け、「はい!一旦停止! この壁を押せる人だけ通りなさい!」と、いい具合に圧力を調整してくれます。

背圧弁が制御する圧力は、常に一定。流量が少なくても多くても自動的に調整し、設定した圧力で、先に流体を送り出すことができるようになります。

背圧弁の作動原理

背圧弁(吸込み行程)イラスト

圧力調整ボルトで、任意に圧力を設定。スプリングでダイヤフラムを押さえつけているので、慣性によるオーバーフィード現象を防止できます。

背圧弁(吐出行程)イラスト

背圧弁の手前(1次側)の配管内部の圧力がスプリングで押さえつけている力を上回り、ダイヤフラムが開いて定量の液が流れます。

また、背圧弁は、二次側の注入配管の圧力変動にも、柔軟に対応します。先ほどは、背圧弁の手前(つまり一次側)の圧力をなんとかしてくれるという話でしたが、今度は背圧弁の「先」の話です。

たとえば、液体Aの中にさらに液体Bをポンプで押し込んでミックスする場合があったとします。ここで背圧弁を設置し、液体Aの2倍以上の圧力設定をしておくと、Aの流れが速かろうが遅かろうが、また、多かろうが少なかろうが、常に設定した圧力をかけて、規定量を安定して注入することができるのです。
背圧弁 図解イラスト

手前から「わ〜っ!!」と走って来た子供たちを「はいはい、ちゃんと並んでねー」とおさめつつ、さらに行き先のことも配慮しながら「はい、いってらっしゃい♪」と、背中をポン!と押して送り出してくれる背圧弁。なんだかベテランの幼稚園の先生か、子だくさんの肝っ玉母さんのような感じですよね。とにかく頼りになる「弁」なのです。ですから付け忘れなどないように、くれぐれもご注意ください。

今日の一句

ポンと背中を押しながら、いってらっしゃいと送り出す。
背圧弁はポンプ界の肝っ玉母さん♪

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