ポンプにまつわる、さまざまな「専門用語」にスポットを当て、楽しく軽やかに解説しているこのコーナー。業界の方にはもちろんのこと、専門知識ゼロでもわかる、クスッと笑える楽しい用語解説に力を注いでおります。

 オーバーフィーディングとは?

オーバーフィーディング Over feeding
ポンプから送られる液体が配管内を移動する際、その液体が持つ「慣性力」によって流れ過ぎてしまう現象。

ポンプの吸込み側と吐出側の差圧が小さい場合や、横引き配管が長い場合などに発生しやすく、所定の吐出量を超えて過剰に吐出してしまう現象です。

「オーバーフィード」または「オーバーフィーディング」は、ポンプ運転時の代表的な注意事項のひとつです。安定した運転を維持するためにも、この現象の発生条件や対策について理解しておくことが重要です。

合言葉は「流れ出したら、もう止まらない」

ポンプの動作を理解する上で、「慣性」は非常に重要なキーワードです。液体は一度流れ始めると、「慣性の法則」により、そのまま流れ続けようとする性質があります。

詳しい物理の解説は省きますが、ポンプの運転において注意すべきなのは、液体がその慣性により必要以上に流れ続けてしまう、いわば「止まらない状態」になることです。これが、オーバーフィーディングの基本的なイメージとなります。

ダイヤフラムポンプがオーバーフィーディングを起こすとき

この仕組みを踏まえて、ダイヤフラムポンプにおけるオーバーフィーディングの具体例を見ていきたいと思います。

まずはダイヤフラムポンプの基本的動作から説明します。吸込み工程でダイヤフラムの往復運動によりポンプ部内の圧力が下がり、吸込み配管内の液体をポンプ部に吸い込みます。次に吐出工程でダイヤフラムの往復で得られる定められた容積変化により、ポンプ部の液体量だけ吐出側バルブを押し上げて吐出します。

ダイヤフラムポンプ周辺の配管が適切であれば、オーバーフィーディングを起こすことなく定量的に液体を移送します。

ダイヤフラムポンプ動作

ダイヤフラムポンプの動作は、実は私たちの日常生活にも似たような光景があります。
たとえば、人気の店舗で人々が整然と並び、順番に入店している場面を思い浮かべてください。スタッフが出入口で入場制限をかけることで、店内の人数は一定に保たれています。出入口の管理により、「入る人数」と「出る人数」が常にバランスよく調整されている状態です。

この様子は、ダイヤフラムポンプの動作とよく似ています。ここでは、「人の流れ=液体」に、「出入口のスタッフ=バルブ」に見立てて、ポンプの仕組みをイメージしてみましょう。

これがバーゲンセールのような特別なイベントになったとき、状況が一変します。お客様の勢いが増し、スタッフだけでは出入口の制御が追いつかず、次々と人が押し寄せてしまいます。後ろから押され、前に引っ張られ、個々の動きが大きな“流れ”となり、もはや制御が効かなくなってしまうのです。——思い出してください、冒頭に登場した「慣性」の話です。

この現象は、液体がポンプを通って流れる様子と重なります。通常であれば、バルブ(=スタッフ)がしっかりと流れを制御し、所定の量だけが吐出されることで、安定した運転が行われます。しかし、慣性の影響で液体が流れ続けようとする力が強まると、バルブが閉じきらず、定量以上の液体が流れ込んでしまうことがあるのです。

そう、これが「オーバーフィーディング」です。液体は一度流れ始めると、一体化した流れとなって動き、その慣性力によって、ダイヤフラムの往復容積(=設定された定量)を超えて流れ続けてしまうのです。

オーバーフィーディング

オーバーフィーディングが起こりやすい状況とは?

オーバーフィーディングは冒頭でも述べたように、ポンプの吸込み側と吐出側の圧力差が小さい場合に起こりやすくなります。大気圧配管への注入などポンプの吐出側に圧力が全くかかっていない状態であったり、圧力が低い配管などへ注入する際には、吸込み側と吐出側の圧力差(差圧)が非常に小さくなります。

定量ポンプにおいてオーバーフィーディングを防ぐには、吐出側の圧力が吸込み側よりも0.03~0.15MPa高い状態が理想とされています。
一方で、吸込み側と吐出側の圧力がほぼ同じ、もしくは差圧が上記より小さいと、流れに対する抑制が効かなくなり、オーバーフィーディングが発生しやすくなります。

※必要な差圧の値はポンプの型式や配管条件によって異なるため、使用する機種に応じた仕様の確認が必要です。

オーバーフィーディング現象を防ぐ「背圧弁」

「流れ出したら、もう止まらない」といった状態にある液体は、その慣性力により惰性的な流れを生み出します。このような現象を防ぐために有効なのが、「背圧弁(バックプレッシャーバルブ)」です。

背圧弁をポンプの吐出配管に設置することで、慣性をもって流れ始めた流体に対し、出口側を抑える圧力をかけることで慣性力を打ち消し、オーバーフィーディング現象を防ぐことができます。

定量ポンプにとって背圧弁は、まさに「頼りになる相棒」となりますので、必ず使用条件に適した背圧弁をセットでご利用ください。

ポンプやタンクの位置、配管の長さなどによって、背圧弁の仕様(設定圧力)や設置場所などに注意が必要になりますので、ご不明な場合は弊社営業までご相談下さい。

「背圧弁」に関しては別途、熱く語っている解説がありますので、そちらも合わせて読んでみてください。
▼ポンプなるほど 用語編 「背圧弁」
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/12/

今日の一句

慣性で、流れ出したら止まらない! ポンプの大敵オーバーフィーディング

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