このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指していますので、気楽に読んでいただければ幸いです。

また、文末の「今日の一句」にもご注目ください。クスッと笑えて記憶に刻まれるよう、毎回魂を注いで作っております。

今回の用語は>>>>> ストローク長(すとろーく・ちょう) Stroke length

【ストローク長】 Stroke length
往復動ポンプのダイヤフラムやプランジャーといったポンプのシャフト部分が移動する長さ(距離)のこと。1ショットの量を決める値。

ダイヤフラムポンプなど往復動の定量ポンプの場合、「ストローク長」と「ストローク数」を変化させることでポンプの吐出量を増減させる事が出来ます、実際にはポンプの「つまみ(ダイヤル)」等を動かすことで吐出量の調整が行えます。

ストローク長の「長」って何?

「ポンプなるほど用語編」、略して「ポンなる用語」が今回スポットを当てたのは、「ストローク長」です。まずは、この「長」は何を意味しているのか? から紐解いていきましょう。

もし、「長」が「社長」や「隊長」のように、何かの団体チームのTOP、「長(おさ)」という意味だったとしたら・・・。

A「ストローク長! もっと自分にやらせてください!」
「いや、お前にはまだ早い」
A「お願いです、ストローク長!!」
「ダメだっ!」
A「そこをなんとか、ストローク長〜!!」

・・・みたいなやりとりがポンプの中で繰り広げられ・・・ているはずもなく・・・。

すいません、ただ言ってみたかっただけです。はい。

 

改めまして、ストローク長の「長」は「長さ」、すなわち距離のこと。何の長さなのかというと、ダイヤフラム及びプランジャーが、ポンプ室を往復運動する距離を指します。

直動ダイヤフラムポンプの例

そもそも往復動定量ポンプというものは、100%のストローク長で使っていただけるように作っています。吐出量『毎分1リットル』の定量ポンプは、100%のストローク長で毎分1リットル吸い込み、100%のストローク長で毎分1リットル吐き出しています。常に全力投球! 我が生涯に一片の悔いなし! といったところでしょうか。

ところが、ある日事情が変わって「送る液体の量は半分でよし!」となったとしたら、今度は毎分500mLを全力で吸い込み吐出するポンプに買い換えなければならないのでしょうか?

いえいえ、そんなことはもちろんありません。往復動定量ポンプはポンプ室の容積変化量が1ショットになり、必要な吐出量が変わっても、「ストローク長」を変化させて容積変化量を調節することで、吐出量を増減させることができるのです。

定量ポンプの吐出量調節

当社のモーター駆動定量ポンプL型を例に挙げると、偏芯カム方式の駆動部に吐出量調節機構がつながっており、ストローク調節ダイヤル(つまみ)をクリクリと回すことで、簡単に吐出量を調節することができます。多くの定量ポンプにストローク長を調節するための機能があり、そのくらい定量ポンプには当たり前に搭載されている機能なのです。

さて、吐出量を調節するといっても、先ほど申し上げた通り「定量ポンプは100%のストローク長で最高のパフォーマンスを発揮する」よう作られていますから、吐出量の調節は「減らす」こと一択。つまり「どのくらいまで絞れるか?」ということになります。ダイヤフラムの移動距離を短くし、ポンプ内の容積の変化を小さくして、1ショットで送れる液体の量を少なくしています。

定量ポンプのカタログを見ると、仕様に「ストローク長 ●〜●mm(●〜100%)」と表記されています。必ず「ストローク数」とセットになっているところもミソですので、これについてはまた別の機会に説明いたしますが、次の表を見てもわかるように、駆動方式によって「どこまで絞れるか」は、だいぶ違ってきます。

たとえば、モータ駆動式の定量ポンプの最小ストローク長をみてみると「約0〜5%」ほどです。一方、電磁駆動式の定量ポンプでみてみると、ほとんどの最小ストローク長が「約40〜50%」となっています。
※モータ駆動式の定量ポンプの場合は、0~100%のストローク長調節が構造上可能です。但し、下限ストローク長の有効範囲はポンプ型式によって各々あります。

この数字の違いは何? と思われるでしょうが、これはポンプの圧縮率の違いにより容積効率が異なるためです。また仕様よりも少ないストローク長での運転は、定量ポンプとしての性能を発揮できなくなるため、必ず仕様の範囲内でのストローク長の調節が必要となります。

定量ポンプが常に最高の状態で働いてもらうためには、ストローク長をどこまで調整可能なのかを、しっかり把握することも大切です。

次回は、今回もちょいちょい出てきましたが、「ストローク長」とセットで覚えて欲しい「ストローク数」について熱く説明いたします。お楽しみに。

今日の一句

ポンプの吐出量を決めるのは「ストローク長」と「ストローク数」
「チョウ」さん「スウ」さんの阿吽の呼吸で1ショットが決まります

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