このコーナーでは、様々な分野で使われているイワキのポンプの中から、「え?こんなところに?!」と思っていただけるポンプの現場にスポットを当て、いろんなシーンで活躍するポンプを紹介しています。

ふだんは日の当たらない場所で「縁の下の力持ち」的に働くことが多い「ポンプ」という地味な存在に、なんとかスポットライトを当てたいという思いから始めたコーナーでもあるので、われわれメルマガ編集部こと「イワ気になる隊」の取材をお受けいただける企業様があれば、どこへでも飛んでいきたい気持ちなんです。

しかしながら、製造現場を一般に公開するというのはかなりハードルの高いことのようで、加えてさまざまな大人の事情も絡み、ここしばらく取材先を見つけられずにおりました。そんな中、勇気を持って手を挙げてくださったのが、長野県小諸市にある株式会社土田商店 浅間化成品センター様なのです!

硫酸、塩酸、次亜塩素酸ソーダなど、無機薬品の小分け・希釈販売をされているとのこと。果たして今回はどんな出会いが待っているのか・・・久々のお客様事例取材に、はやる気持ちを抑えきれず、北陸新幹線に飛び乗ったイワ気になる隊でした。

腹が減ってはなんとやら・・・まずは上田駅から小諸駅前

そんなわれわれを「上田」駅で出迎えてくれたのは、イワキの代理店である株式会社セムコーポレーション長野営業所の宮澤所長と、イワキ松本営業所の樽井所長のお二方。

真田氏の家紋として有名な「六文銭」がデザインに取り入れられた上田駅

ご挨拶もそこそこに「腹が減っては何とやら、まずは腹ごしらえといきましょう!」・・・そんな言葉に誘われて、向かった先は小諸駅前の「天麩羅割烹 懐(かい)」さんです。なんでも、これから伺う株式会社土田商店 浅間化成品センターの工場長おすすめのお店だそうでして・・・天婦羅屋さんのランチにもかかわらず、焼き魚定食やソースカツ丼など魅力的なメニューが並んでいます。しかしここは全員、工場長おすすめの「天婦羅定食」をいただくことにしました。まだ日も高いうちからカウンターに座り、目の前で天婦羅を揚げてもらう幸せ・・・思わず本日のミッションを忘れそうになりました(笑)。

天麩羅割烹 懐(かい)

工場長おすすめの天麩羅定食を注文

ふきのとう、たらの芽と地元産の山菜が揚がり、シャキシャキの蓮根に続いて、はぜ、めごち、きす、えび、と魚介が続きます。天かすの乗った“天婦羅屋さんのサラダ”と茶碗蒸し、石垣鯛のあら汁と炊き立てご飯までいただきかなり満腹でしたが、このお店にはどうしても外せない「ひと品」があったのです。なんと! 名物「揚げあんパン」!! そうです、「あんパン」の天婦羅です。

名物「あんパン」の天婦羅

外はサクサク、中はふわふわ

興味津々でオーダーしてみると・・・揚がってきたのは想像以上に大きくて丸いフォルムの天婦羅でした。写真だとなんだかわからないので(笑)、わがままを言って4つに切っていただくと、中にはしっかり「あんこ」が詰まっていました。外はサクサク、中はふわふわ・・・味は想像よりあっさりしていて、満腹はどこへやら、ペロッとたいらげてしまいました\(^o^)/

同店の大将いわく「パン生地とあんこの割合がポイントなんだよね。色々なあんパンを試してみたけど、これが一番!」とのことで、佐久市の田村屋さんのあんパンを使っていると、こっそり教えていただきました(#^^#)

ここからが本番! いざ、株式会社土田商店 浅間化成品センター様へ

そんなこんなで、絶品天婦羅にすっかり満足してしまった私たちですが(笑)、ここからが「いざ本番!」です。小諸駅から車で10分もかからず、本日の取材先である株式会社土田商店 浅間化成品センター様に到着しました。

株式会社土田商店 浅間化成品センター

2016(平成28)年12月に完成し、翌1月から本格稼働したという同センターは、「日本一美しい工業団地」の呼び名も高いインター小諸工業団地にあります。北に浅間山、南に富士山、夜には満点の星達に囲まれる風光明媚な高台に位置していますので、景色ともども日本一に相応しい団地ですね。浅間化成品センター様も、設立から2年経ったとは思えないほどピカピカの真新しさ! とても清潔で、整頓が行き届いているのが印象的です。

事務所の玄関では、諏訪地方のお祭り「御柱祭」で役目を終えたオブジェが縁起良く私達をお迎えしてくれました。
さてここからは、浅間化成品センター様の五味工場長にお話を伺います。

── 本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。まずは、御社のお仕事の内容について、簡単に教えていただけますか?

浅間化成品センター 五味工場長

「元々は下諏訪町にある一軒の薬局からスタートした会社なんです。創業は昭和24年ですが、高度経済成長の波に乗り、近隣の岡谷を含めた諏訪地域では、メッキなどの地場産業が発展していきました。つまり、工業用薬品が多く使われるようになっていったわけですね。

具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウム、重亜硫酸ソーダ、塩化第二鉄液、ポリ硫酸第二鉄液等の単一組成無機薬品を扱っているんですが、この業界では小回りのきく会社がほとんどなく、そこに弊社の存在価値が生まれたようですね」

── なるほど! お客様のご要望にお応えするうちに、いつの間にか「薬局」から、液体の薬品を扱う「化学薬品工場」に変身していたわけですね?

「変身というか、下諏訪町では今でも薬局を営んでおり、そこが本社機能も果たしています。その後、薬局の商いより工業用化学薬品を扱う割合が増えたことで、茅野市に諏訪化成品センターを建設しました。30余年が経過し、販路の拡大、BCP(事業継続計画)等を考慮してもう一カ所製造拠点を持ちたいと、ずっと候補地を探していたのですが・・・2011年の東日本大震災以降は、少しでも危険の伴う業種の工場建設に関しては地元住民の同意が取りづらくなり、ようやくこの地を見つけることができたんです」

── それはよかったですね。上信越自動車道のインターも近くて、物流にも最適な場所ですよね。

「大手メーカーさんの場合、10トンのタンクローリーでドーンと納品するわけですが、われわれは、家庭用灯油缶(20L)サイズ、一本からでも薬品をお届けしたことで、少しずつお客様の信頼を得てまいりました。ですから、物流は弊社の要なんです。納品先は主に長野県内ですが、今では関東近郊など県外への納品も増えましたし、『急ぎでお願いします』と言われることも多いので、高速道にすぐ乗れる場所に製造拠点を持てたのはありがたいですね」

── 御社のお仕事内容については後程工場を拝見しながらお伺いするとして、まずはイワキとの出会いについて教えてください。どのような経緯で、イワキのポンプをお知りになったのでしょうか?

「私が入社した23年ほど前には、薬品をタンクローリーへ移送するためのイワキ製のポンプがすでに使われていましたので、取引開始の経緯については正直なところよくわかりません。やはり強酸、強アルカリ薬品の長期使用に耐えられるケミカルポンプとなると、イワキさんの製品を選ぶしかなかったのではないでしょうか」

── ありがとうございます。御社では、何台くらいイワキポンプをお使いいただいているのでしょう?

「そうですね二カ所の拠点を合わせると、ポンプ単体でも約100台は使っていると思いますよ。しかし、メインはやはり『希釈装置』でしょう。ここ浅間化成品センターでは、お客様のご要望の濃度に希釈した硫酸希釈液と、苛性ソーダの希釈液をメインに扱っているので、イワキさんの『希釈装置』がまさに生命線なんですよ。

じつは、以前は他社メーカーさんの希釈装置を使っていたのですが、いわゆる『バッチ式』でしたので、液温がなかなか下がらないのが悩みの種でした。ご存じのように硫酸と水が混ざる際にはかなりの熱を発するので、流量管理をしながら、希釈液を少量ずつポタポタとタンクに貯めていく方式だと希釈液の熱がなかなか下がらず、温度管理に大変苦労していたんです。

納品までの時間がないからと、液温が高いままタンクローリーに移送すれば、当然タンクの痛みも早くなりますし、納品先のお客様のタンクも同じように痛めてしまいかねません。そんな悩みを相談した際に、セムコーポレーションさんから、イワキ製の希釈装置をご提案いただいたんです」

希釈タンクが不要な「インライン式」硫酸希釈装置

なぜ、イワキ製【硫酸希釈装置】は、液温が低い希釈硫酸を供給できるのか? ここで少しだけ説明しておきましょう。イワキ製【硫酸希釈装置】は、先の『バッチ式』と違って希釈タンクを持たず、配管の中で硫酸と純水を混ぜ、さらに熱交換器を通すことで、配管からは冷却された希釈液が出てくるという『インライン式』を採用しています。

働く【硫酸希釈装置】とご対面!

それではいよいよ、現場で働く『希釈装置』を見せていただくことにしましょう。

まずは『硫酸希釈装置』からです。ここ浅間化成品センター様では、センター新設に併せて同装置を導入いただけたので、まさにピカピカの硫酸希釈装置にご対面できる貴重な機会となりました\(^o^)/

耐食性に優れたグラファイト化工製の熱交換器

液温・圧力を監視することで安全に送液

希釈部はポリカーボネート板で覆い万が一の被液を防止

制御盤が設置されたこちらの部屋では、インラインで硫酸と純水のミキシングを行ないますが、装置の要である部分はカバーで覆われているなど、細部に渡るまで気配りの行き届いた設計になっています。

この希釈装置にかかれば、75%や50%など一般的な濃度はもとより、たとえば「62.5%」といった大手メーカーでは扱っていない特殊な濃度の硫酸希釈液も、この制御盤から指令を送るだけで自由自在につくれるのであります(*^^)v

また、制御室奥の壁際にはブルーの電動バルブが6つ並んでいますが、それぞれ濃度が違う希釈液を送る配管につながっていて、別室にあるタンクまで安全に移送できるようになっています。

希釈した硫酸をレシピ毎に別のタンクに送るための自動弁

続いて【苛性ソーダ希釈装置】とご対面!

こちらは、硫酸と並んで同センターの主力商品となっている苛性ソーダの希釈装置です。

写真左側が苛性ソーダ希釈装置

写真左側が苛性ソーダ希釈装置

熱交換器

制御盤

制御盤

── それにしても、美しい工場ですね~。タンクも床も、ピカピカじゃないですか!

「硫酸希釈装置の方は、以前から諏訪化成品センターでも使っていたのですが、苛性ソーダの希釈装置は、今回初めて導入したんです。こちらも制御室とタンク室を別に設計しました。タンク室はしっかり間仕切りを行い、万が一の場合も薬品が外へ流れ出ないよう配慮しましたし、床もFRP(繊維強化プラスチック)加工してあります」

── 安全対策もバッチリですね! 初めて【苛性ソーダ希釈装置】をお使いいただいた率直な感想をお聞かせください。

「思ったより、装置がコンパクトでした。使ってみて一番感動したのは、やはり熱交換の良さですね。お客様のタンクの耐久性を考えると、40℃以下に下げてから移送したいわけですが、クーリングタワーを使っても以前の装置はなかなか熱が下がらずに、結局はチラー(冷却水循環装置)を増設したんです。そのために電気の配線を見直さなければならなくなり、結果としてこの装置より高くついてしまいました。もっと早くイワキさんの装置を知っていればよかったんですが・・・」

── そのまま営業トークに使わせていただきます(笑)。素敵なコメントをありがとうございます!

こちらがクーリングタワーです!

五味工場長のお話を伺っていると、薬品から発生する「熱」に苦慮なさっていることがよくわかります。このクーリングタワーでも、冷却水の循環用にマグネットポンプが元気に働いていました。

保温されているので黒いモータしか見えませんが右手前に冷却水循環用ポンプが設置されています

さてさてこの後もイワキへのご要望など、五味工場長からコメントをいただいたのですが、思わず気合が入り結構な長さになってしまったので、続きはまた来月号でお届けしたいと思います。どうぞ、楽しみにお待ちくださ~い♪

株式会社土田商店

創業 1949年(昭和24)7月
本社所在地 長野県諏訪郡下諏訪町中央通242-1
事業所所在地 諏訪化成品センター:長野県茅野市宮川7275-1
浅間化成品センター:長野県小諸市西原 515-1
事業内容 土田薬局(本社):
医薬品、処方箋調剤、資生堂化粧品、介護用品、日用雑貨等
浅間化成品センター/諏訪化成品センター:
工業薬品(有機、無機)、メッキ薬品等の製造・販売、
塗料、接着剤、試薬、理化学機器、洗浄機、クリーンルーム用品、工業用テープ等

 

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