このコーナーでは、様々な分野で使われているイワキのポンプの中から、「え?こんなところに?!」と思っていただけるポンプの現場にスポットを当て、いろんなシーンで活躍するポンプを紹介しています。

前回≪硫酸や苛性ソーダを安全に希釈! 化学薬品工場・前編≫に引き続き、長野県小諸市の株式会社土田商店 浅間化成品センター様/本社様よりお届けします。メルマガ編集部こと「イワ気になる隊」は、硫酸、塩酸、次亜塩素酸ソーダなど、無機薬品全般の小分け・希釈販売をされている同社で、数多くのマグネットポンプはもとより、【硫酸希釈装置】や【苛性ソーダ希釈装置】と感動の対面を果たしました。私たちも実際に現場で稼働している【希釈装置】を目にしたのは初めてのことでしたので、とてもよい勉強になりました。

やさしい笑顔が印象的な浅間化成品センターの五味工場長に工場内をご案内いただいた後、再びお話を伺ったのですが、ここは敢えてイワキに辛口のコメントを頂戴してみたいと思います。

工場長より、イワキへのご要望

浅間化成品センター 五味工場長

── それでは、せっかくの機会ですので、イワキの良い点・悪い点を、ざっくばらんにお聞かせください。

「そうですね。悪いところを先に言っちゃうと、値段が高いことですかね(笑)。良い点は、何かあった時にはすぐに対応してくれるところと、何もなくてもセムコーポレーションさん(イワキの代理店)が顔を出してくれるので、安心して長いお付き合いができるところかな。

何しろ、われわれにとって『希釈装置』は事業の生命線なので、トラブルで止まっちゃったりしたら、もうお手上げなんですよ」

── これまでに、何かトラブルがあったのでしょうか?

「自分の不注意で、ある事件が起きました。硫酸希釈装置の外付けのバルブを閉めたまま稼働させてしまい、配管から逃げ場のなくなった硫酸が噴き出してしまったことがあったんです。「ジャー」という音で気づいたんですが、セムコーポレーションさんにすぐに電話しました。

なにせ高価な装置ですから、自分のミスで壊してしまったら大変なことです。会社から弁償しろと言われたらどうしよう・・・などとかなり慌てたんですが、その日のうちに漏れた部分の配管とよれたパッキンを交換していただき、翌日から通常運転することができました。たしか、夜遅くまで作業してもらったように記憶しています。うちのように特殊な装置を使っている場合、とかく対応に時間がかかったりするものですが、迅速にご対応いただけてありがたかったですね」

── お怪我がなくてよかったです。その後は何か安全対策を取られたのですか?

「万が一の場合に備えて『安全弁』を取り付けていただきました。ポンプで送った硫酸が閉まっているバルブから噴き出すということは、そこに相当な圧力がかかったわけですから、配管の回路設計を見直していただき、一定以上の圧がかかった場合の逃げ場(バイパス)を作ってもらったわけです。使用者側の操作ミスはあってはいけないことですが、人間のやることですから完璧にはいきません。安全対策に、念の入れ過ぎはありませんからね」

── そうですよね。万が一のトラブルに備えて、ポンプや部品をストックされたりしているのでしょうか?

「以前はポンプをオーダーしてから納品されるまでに時間がかかることもあったので、予備のポンプを持たざるを得ませんでした。高価なので全てのポンプというわけにもいかずに思案していたところ、セムコーポレーションさんより「型式統一」をご提案いただいたんです」

ポンプの「型式統一」とは?
用途に応じてポンプを「能力」で選んでいくと、どうしても同一工場内で数種類のポンプを使用することになってしまいます。そこで有効な手段が「型式統一」です。多少オーバースペック気味でも、工場内で同じ型式のポンプをお使いいただければ、パッキン等、部品の組み換えによる応急処置ができるので、予備のポンプをストックする必要がなくなります。さらにメンテナンスの「予防安全」と併用することで、費用対効果が倍増します。

── それでは最後に、イワキに対するご要望などあれば、何なりとお聞かせください。

「決してイワキさんの製品が悪いわけではないですが、今まで以上に壊れない丈夫なポンプをお願いします。たとえ誤って空運転しても壊れない、キャビテーションやウォーターハンマー現象に対して、より強い機種を希望します。なかなか壊れなかったら、新機種は商売にならないですけどね(笑)

あとは、先の『希釈装置』で、制御盤のソフトに関する質問や要望を出した際、ハード面の対応よりも時間がかかることがあります。何せこの装置はうちの生命線なので、このあたりも改善いただけると助かりますね」

── ご要望、しかと承りました! イワキはハード&ソフトの両面でお客様にご満足いただけるよう、日夜努力を重ねてまいります。

イワキ松本営業所の樽井所長いわく、県内を車で走っていると、土田商店様のタンクローリーをよ~く見かけるそうです。こちらの浅間化成品センター様では、3000Lの小型車から10tの大型車まで、10台以上のタンクローリーが活躍しているとのこと。

ドアに付いた「ロゴマーク」、とてもかわいいですよね。“打ち出の小槌”をCI導入時にモチーフ化したマークなのだそうです(*^^)v

打ち出の小槌”をモチーフとしたロゴマーク

小廻りのきく少量運搬用タンクローリー

下諏訪町の一個人薬局からスタートし、工業用化学薬品工場に華麗なる転身を遂げた影では、この「打ち出の小槌」のミラクルパワーが働いていたのかもしれませんね。そんな想像をしていたら、どうしても下諏訪町の本社をこの目で確かめたくて仕方がなくなってしまいました(#^^#)

どうしても“気になった”ので、下諏訪町の本社にも突撃しちゃいました!

そんなこんなで、イワキの代理店である株式会社セムコーポレーション長野営業所の宮澤所長に、土田商店本社様の取材許可をいただけるようお願いをしたのですが・・・なんと土田社長直々にご対応くださるというではありませんか

というわけで、改めて長野県下諏訪町にある株式会社土田商店本社様を訪れ、アンティークの漢方薬箪笥が存在感を放つ応接室にて、社長の土田耕嗣様にお話を伺いました。

── 本日は思いがけずにお時間をいただき、心から感謝申し上げます!

「ふだんはあまり取材を受けないんですよ。業界紙の取材なんかも、全部お断りしているくらいですが、宮澤所長のお願いじゃ、断れないじゃない(笑)」

── ありがとうございます。先日、浅間化成品センター様を取材させていただいたのですが、五味工場長から御社の沿革をお伺いしまして、「一個人薬局からスタートした」という部分がどうしても気になったものですから・・・。

アンティークな漢方薬箪笥

株式会社土田商店 社長 土田耕嗣様

「土田商店は今年で創業70年、私が三代目です。多角化に乗り出したのは現会長の父ですが、今では化学薬品の売上げが9割を占めるようになりました。

うちみたいな小さい会社は、結局、大手さんがやらないことをやるしかないわけですから、諏訪地域の工業の発展と共に、工業用化学薬品を『必要な時に必要な分だけ』お届けすることで、しだいにお客様の信頼を得ることができたと思います」

── そういう意味では、イワキの「希釈装置」もお役に立てているのでしょうか?

「もちろんです! 『硫酸希釈装置』は、茅野市にある諏訪化成品センターに1台、今回お越しいただいた小諸市の浅間化成品センターに1台。浅間化成品センターには新たに『苛性ソーダ希釈装置』も設置させていただきました。これらの希釈装置を使って、大手メーカーさんが在庫していない特殊な濃度の希釈液も、制御盤から指示を送るだけで自在に作れるようになりました。さらに、必要な時に必要な量だけ作れるので、大きな希釈用タンクを持たずに済むようになったこともメリットになっています。作った分だけすぐに納品できれば、事業のサイクルにも好循環が生まれますからね」

── やはり、急な配達を望まれるお客様も多いのでしょうか?

「常時決まった製品を作っている製造業ではある程度の必要量が読めますが、化学薬品は浄水場・下水処理場などのインフラ施設や排水処理の分野にも広く使われています。上下水道処理施設の分野では、台風などの荒天で急に不純物が増えるなど不確定な要素も多いので、この薬品が急に足りない・・・なんてことも充分起きますね」

── なるほど。今の御社は、そうしたお客様のニーズにひとつずつ応えて行った結果なのですね。

「浅間化成品センターには、小型のタンクローリーもあったでしょ? 化学薬品部門も、最初はここ下諏訪町で立ち上げたんですが、すぐに手狭になって、茅野市宮川に諏訪化成品センターを建てたんですよ。

それこそ当時は小さい車しかなくて。でも裏を返せば、それで大型のタンクローリーが入りにくい敷地にあるお客様から、小型車で・・・とご注文をいただけるようになったんです。結局は他社がやらないことをやっていれば、多少値段が高くてもご注文をいただけるわけです(笑)

そうそう、他社がやらないことと言えば、自社製品の『ジアクリン』も、発売当初は画期的だったんですよ」

── 【ジアクリン】は、御社の Webサイトで興味深く拝見しました。今話題の「次亜塩素酸ナトリウム」を使った製品ですよね?

「最近でこそ、次亜塩素酸を使った空気清浄機なんかも出てきましたけど、うちはその前から次亜塩素酸ナトリウムの除菌効果を、なんとか安全なカタチで一般家庭などにご提供できないかと考えてきたんです。私自身が薬剤師でもあるので、“薬品を安全に、人の暮らしに役立てる”ことに使命を感じていたのかもしれません。

『ジアクリン』は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希塩酸水溶液で中和した機能水を製品化したものです。除菌効果、消臭効果に優れ、インフルエンザが流行する時期には特にその威力を発揮します。地元の保育園、小中学校などに専用の超音波噴霧器をご提供しています」

ジアクリン専用の超音波噴霧器

── それは素晴らしいですね。そういえば、建物の外観も“薬局”には見えませんよね。

某映画に出てくる時計台をイメージしたデザインの社屋

「パッと見、学校? 道の駅? と言われることも多いんですが、2015(平成27)年の5月に、本社機能と薬局部門をこの地に移しました。以前はここから程近い商店街の中にあったんですが、駐車場もなかったので、思い切ってここに移転を決めたんです。

外観には私のこだわりがあって、じつは、大好きな映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくる時計台をイメージして、この建物を設計したんですよ。こんなこと言うと、歳がバレますけどね(笑)」

── そうなんですね! 遊びゴコロ満載の楽しいお店ですね。お店の外にもレトロな赤いポストがあったり、一瞬「バス停?」と思いきや、営業時間のご案内板だったり・・・入口では信州のアイドル「アルクマくん」が、店内では「ペッパーくん」がお出迎えしてくれましたね。

「一番注目してもらいたいのは、やはりこの“時計”ですね。当然“特注品”なわけですが、数社お声掛けしたところ、ある一社が翌日に名古屋から飛んで来てくれました。話がその場で決まり、希望通りの時計を製作していただけました。仕事はこうじゃなくっちゃ!と、自社の仕事のスピード感も見直した次第です」

特注の大時計が注目ポイント

── なるほど、われわれイワキも見習わなければいけませんね。今回の取材では色々と勉強させていただき、心より感謝申し上げます。株式会社土田商店様が時を刻み、歴史を積み重ねられていかれますことをお祈りいたします。これからもセムコーポレーション、イワキ共々、土田商店様のニーズに応える製品とサービスをご提供させていただきます。本日はお忙しい中、取材にご協力をいただき誠にありがとうございました!

株式会社土田商店

創業 1949年(昭和24)7月
本社所在地 長野県諏訪郡下諏訪町中央通242-1
事業所所在地 諏訪化成品センター:長野県茅野市宮川7275-1
浅間化成品センター:長野県小諸市西原 515-1
事業内容 土田薬局(本社):
医薬品、処方箋調剤、資生堂化粧品、介護用品、日用雑貨等
浅間化成品センター/諏訪化成品センター:

工業薬品(有機、無機)、メッキ薬品等の製造・販売、 塗料、接着剤、試薬、理化学機器、洗浄機、クリーンルーム用品、工業用テープ等

 

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