このコーナーでは、ポンプにまつわる様々な「専門用語」にスポットを当て、イワキ流のノウハウをたっぷり交えながら、楽しく軽やかに解説します。今まで「なんとなく」使っていた業界の方はもちろん、専門知識ゼロでもわかる楽しい用語解説を目指していますので、気楽に読んでいただければ幸いです。

また、文末の「今日の一句」にもご注目ください。クスッと笑えて記憶に刻まれるよう、毎回魂を注いで作っております。

今回の用語は>>>>> ガスロック(Gas Lock)

【ガスロック】 Gas lock
ポンプ室内にガス(気体)が混入し滞留することで、ダイヤフラムが容積変化を起こしてもガスが膨張・収縮するだけで、液体が移送されない状態をいう。単に「ガスロック」または「ガスロック現象」と呼ぶ。同義:エアロック(Air lock)

今回スポットを当てた「ガスロック」。ロックというと、音楽のロック(Rock)を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、ここでいうロックは「鍵をかける」方のロック(Lock)。「ガス(気体)のせいでロックがかかる」から、ガスロックです。

冒頭の用語の説明にもあるように、ポンプ室の中にガスが混入、または発生してしまい、それがポンプ室の中に溜まってしまうことでガスロックは起こります。一度ガスロックが起きてしまうと、ポンプが一生懸命動いているにもかかわらず、液がちっとも出てこない・・・という非常に切ない状況になってしまいます。

液がうまく出せなければポンプとしての面目が立ちませんから、「なんとしてもガスロックを阻止するのだ!」ということで、ガスロックを丸裸にしていきたいと思います。

「ガスロック」が起こる条件

ガスロックが起こるためには、「ある条件」が揃わなければなりません。それは・・・

  • ポンプが「往復動ポンプ」であること
  • ポンプが移送する液体に気体が含まれていること(主に次亜塩素酸ナトリウム)
  • 吸込み側の圧力よりも吐出側の圧力が高い(背圧がかかっている)

この3つの条件が満たされて初めて、「ガスロック」という現象(症状)が起こります。では、具体的にはどんな条件で発生するのか? 見ていくことにしましょう。

ガスロックが起こる条件:往復動ポンプ

ポンプにはいろんな種類があり、原理や構造により分類されています。ガスロックが発生する恐れがあるのは、ズバリ、このポンプ!

「容積式」の「往復動ポンプ」。中でも「ダイヤフラムポンプ」がガスロックしやすく、イワキのポンプで言うと「電磁定量ポンプ」がこれに当たります。

非容積式 遠心ポンプ 渦巻きポンプ
粘性ポンプ カスケードポンプ
容積式 往復動ポンプ プランジャーポンプ
ダイヤフラムポンプ
ベローズポンプ
チューブフラムポンプ
回転容積ポンプ ギヤポンプ
ロータリーポンプ
ロータリープランジャーポンプ
スクリューポンプ

 

電磁定量ポンプの構造を簡単に説明しますと、コントロール部からのパルス電流により、電磁石とスプリングの力によって往復動運動が起こります。

そして往復動運動がプランジャーに連結されたダイヤフラムに伝わり、ダイヤフラムが前に出たり引っ込んだりします。この行ったり来たりでポンプ室内の容積の変化が起き、ポンプ部のバルブの作用で、液を一方通行で送るポンプ動作が行われます。

ダイヤフラムポンプ動作原理イメージ図

ガスロックが起こる条件:次亜塩素酸ナトリウム

ガスロックの原因は「ガス」です。ポンプ室の中に溜まったガスが悪さをして、ポンプの仕事を邪魔します。では、そのガスはどこから来るのか? 大気中に漂う気体も多少影響すると思われますが、ガスの主な発生源はポンプの中を流れる液体そのもの。つまり液体の中に含まれている気体が、なんらかの影響で気化し、それがポンプ室の中に溜まってしまうのです。

気体を含む液体といえば、身近なところでは炭酸水やビールなどの炭酸飲料がありますが、それ以外にも「次亜塩素酸ナトリウム」があげられます。「ジア」または「次亜塩素酸ソーダ」とも呼ばれ、化学式で「NaClO」と表します。

「次亜塩素酸ナトリウム」は低コストで強い殺菌力があり、いろんな場面で利用されています。身近なところでは上水道、浴場、プールの殺菌、塩素系漂白剤や殺菌剤などに使用されています。

逆にいうと、ガスロック問題で困っている方の多くは、次亜塩素酸ナトリウムを扱っていると言い換えることができるかもしれません。

次亜塩素酸ナトリウムは、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを吸収させて製造されています。

2NaOH + Cl2 → NaClO + NaCl + H2O

化学式がピンとこなくても、「塩素ガスを吸収させて作った」とあれば、なんか「ガスっぽい」ですよね(笑) といっても炭酸水ほど激しい泡ではなく、かなりおとなしめのシュワシュワですが、発泡性の液体であることには変わりありません。

次亜塩素酸ナトリウムは温度に影響されやすく、25度以上、30度にもなれば、かなりの発泡が見られるようになります。従って、屋外で直射日光が当たる場所や、季節によって温度変化が激しい場所などは要注意。冬場はまぁ大丈夫だけれど、夏場はガスロックが多発して困る・・・といった状態になりやすいことがわかっています。

また、ずっと連続運転しているポンプに比べ、ちょいちょい止めてはまた動かす・・・を繰り返した方が、ガスロックの発生率が上がりやすいことも、お伝えしておきましょう。

このように発泡性の液体である次亜塩素酸ナトリウムを、ダイヤフラムポンプで扱う場合に、ガスロックは発生しやすくなります。次亜塩素酸ナトリウムはその目的と用途から、一度にドバッ!と入れるよりも少ない量を定量的にコツコツと注入したいというニーズが圧倒的に多いです。そこで、適任である電磁定量ポンプに任せたいところなのですが、次亜塩素酸ナトリウムの発泡性という特徴は、ガスロックの原因になることがあります。

ガスロックが発生する仕組み

オーバーフィード現象やサイホン現象を防止するために、電磁定量ポンプの吐出配管上には、チェックバルブを取り付けることが推奨されます。そのため電磁定量ポンプの吐出側のバルブは、常に一定の力で押さえつけられています。そのためポンプ室に気泡が混入すると、吐出側のバルブに阻まれ気泡が滞留していきます。

そのような状態でポンプを運転し(ポンプの圧縮率にもよりますが)ダイヤフラムがポンプ室の容積変化を起こしても、気泡がポンプの動きに合わせて膨らんだり縮んだりを繰り返すだけで、ポンプが液体を吸い込みも吐き出しもしない状態になってしまうのです。

ただし吐出側のバルブにかかる圧力よりもポンプ室の内圧が高い場合、気泡は押し出され、ガスロック状態になることはありません。

ポンプ室に気泡が混入すると・・・

バルブにかかる背圧 > ポンプ室の内圧

ガスロックが起きた! さぁ、どうする?!

このように厄介なガスロック現象ですが、未然に防ぐ対策はあります。混入した気泡が邪魔をするならば、いなくなってもらえばいいのです。気泡はポンプ室の上部に溜まりますので、そこにエアー抜き口を設置し、混入した気泡を放出するのです。

イワキには、その名もズバリの「アンチガスロックポンプユニットESU型」があります。このESU型は移送する液体に気泡が混入しても、自動エアー抜き機構によって自動的にガスを排出します。

また仮にガスロック状態になっても、ポンプ動作速度が上昇。自動エアー抜き口から強制的に移送液の一部とともにガスを排出し、通常運転に戻ります。

アンチガスロックポンプユニットESU型

またあらかじめ気泡がポンプに入りにくくすることで、ガスロック現象を未然に防ぐ方法があります。

それが「脱泡継手DG型」です。吸込み配管内や脱泡継手本体内で発生した気泡が、ガス排出口へ誘導されることで、ポンプ内部へ気泡が吸い込まれることを防ぎます。

脱泡継手DG型

当社ではこの他にも、ガスロックによる注入不良を抑制する製品をご用意していますので、ご検討の際には是非お問い合わせください。

関連動画(イワキ 電磁定量ポンプEHN エアーロックの対処方法)

今日の一句

ポンプにガス。人にストレス。溜めてもひとつも良いことなしよ。

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